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 りっとうの景観を語る
*ふるさと風景〜わがまち栗東〜を百年先の次代へと継承するため、「景観条例」「百年計画」を制定しました。
「すだじい」は、団栗の一種。団結する栗東市民を意味します。
 
第13回寄稿 川内 耕

栗東高等学校美術科 教諭
栗東市景観百年審議会・委員
◎バランス感覚と意識の継承
 栗東市の景観を次の世代、またその次の世代へと長いスパンで考えていくことは、必要なことだと思います。しかし、同時に、価値観や感覚の違いがある中で、皆がよいと思える街並みを残していくのは大変困難なことだとも思えます。そもそも「よい街並み」や「いい景観」というのはどういったものなのでしょうか。
 人の感覚というのはさまざまで、「いい」と感じる基準や、感じ方の度合も異なります。また、私たちは、何かを選択していくときに、多かれ少なかれ、個々の利益や利便性など、損得を判断基準の中に入れています。人が快適に生活していく中で、利益や利便性の追求は欠かせません。人がこれまで発展してこられたのも、これらの追求が原動力の一つです。しかし、多様な価値観・感覚、個々の利益・利便性ばかりを優先すると、バラバラで、今までとなんら変わることはないでしょう。やはり、私たちが、よい景観を残していこうとするときに、ある程度の約束事を持つことは必要だと思います。ですが、両者の間にうまくバランスをとっていくことが大事だと思います。
 私は以前、ヨーロッパを巡る機会がありました。4カ国ですが、パリ、アントワープ、ゲント、ブルージュ、ブリュッセル、ウィーン、ツェルマットといった街を巡りました。どの街も美しく、まさに「絵になる風景」でした。旅という夢と憧れの中での感覚ですから、実際に生活するのとは、多少感覚の違いはあるでしょう。しかし、どの街からも、芸術文化を愛し、守ってきた歴史の厚みと、意志の継承を感じました。
 パリはまさに皆から愛される街ですが、フランスでは文化省直属の国家公務員のフランス建造物監視建築家が各県にいて、パリには7人がいるそうです。景観規制地区では、建造物監視建築家が許可した建物でないと新築・改築などができない仕組みなのですが、建築物の許可にあたっては明文化されたものはなく、その時その時の建築家の判断に任されて、許可したあとは細かい口出しはしないそうです。厳しいようで、なんとなく自由度がありませんか? 皆に好かれる街並みは約束事の上にも個の主張や自由度があるように思えます。
 栗東市の景観を考えていく作業は始まったばかりですが、この取り組みの歴史が、よい街並みを残していく市民の意識の継承となっていくことを願いつつ、私自身教育において、よい景観を残していく意識や、芸術文化を愛する心を少しでも育てていけたらと思っています。
問合せ
都市計画課 TEL551-0349 FAX.552-7000
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