1日平均の乗車人員数で滋賀県内の最多を数えるJR草津駅は、栗東市と隣り合う草津市渋川にあり、栗東の人々にとっても親しみのある駅です。渋川は、昭和31年(1956)まで栗東町に含まれており、草津駅は一時期、栗東町にあったといえます。今回は、その草津駅の西側に、昭和の初めにあった草津競馬場について紹介します。
昭和6年(1931)6月5日、栗太郡治田村渋川に、滋賀県内では最初の常設競馬場として開設された草津競馬場で、初めての競馬が開催されました。草津駅に停まった臨時列車からは、多くの競馬ファンが降り立ち、競馬場へと向かっていきました。初日の観客は7,000人。土曜日とも重なった2日目には、10,000人以上の観客を集めています。駅前には大きなアーチが立てられ、家々の軒先には提灯が吊るされるなど、お祭りのような騒ぎで盛り上がったといいます。
草津競馬場の運営には、滋賀県愛馬倶楽部と滋賀県畜産組合連合会が携わり、昭和14年(1939)までの間、春秋の年2回の競馬が開催されました。出走する馬の多くは、近くの農家で飼われていた農耕馬で、地元の若者たちも騎手を務めていました。まれに中央競馬から馬が来ることもあり、競馬ファンのみならず、近くに住む人たちにとっても娯楽の機会となっていたのです。
しかし、戦争の影響により、昭和15年(1940)からは「軍用保護馬鍛錬競走」として軍隊式の競馬に改められ、昭和19年(1944)まで続けられています。また、草津駅から近いということもあり、軍の物資集積場としても用いられました。
戦後は、昭和21年(1946)に競馬が再開され、昭和23年(1948)には県営競馬場となりますが、昭和26年(1951)3月の開催を最後に休止となります。その後、草津競馬場は正式に廃止となり、昭和29年(1954)には県立草津農業試験場の養鶏場に転用されました。
草津競馬場があった場所は、今では大型ショッピングモールとなっています。現在では競馬場の痕跡はありませんが、草津駅周辺に立ち寄ったときに、現在とはまた別のにぎわいがあったことに思いをはせてみてはいかがでしょうか。
※栗東歴史民俗博物館では、10月27日(日)まで開催中の企画展「馬のまち栗東」で、草津競馬場に関する資料も展示しています。 |