トップページ(目次)へ 
おいしいに夢を載せて
 「作業所」と呼ばれる市内の福祉支援施設。そこで作られている、野菜、お菓子、パンなどが「質も高くて、おいしい!」と評判です。おいしさの隠し味は、関わる皆さんの思い。障がいのある人が自立を目指して働くキッチンや工房では、今日も多くの夢が育まれています。
愛情たっぷり、自然栽培の野菜が味わえる「オモヤキッチン」
■社会経験を積む場として、障がいのある3人が活躍
 今年3月に、霊仙寺の作業所「おもや」の横にオープンした「オモヤキッチン」。おいしさが評判の「おもや」の野菜を味わえるとあって、連日、市内外から多くの皆さんで賑わっています。
 ここは、知的障がいや精神障がいのある皆さんが社会経験を積む場としての役割も果たしており、3人が調理補助や接客に携わっています。
 明るく開放的な入り口で、「いらっしゃいませ」と元気な声と、とびきりの笑顔で迎えてくれるのが、行岡宏道さん。休んだ時には、「今日は、彼はいないの?」とお客さんにいわれるほどの人気スタッフの一人です。毎日、朝礼時に飲み物のメニューを声に出して確認するのも行岡さんの役割。「注文にあせる時もありますが、お客さんからいつも元気をもらっています。多くの人に来てもらえるように頑張りたいです」と笑顔が輝きます。
 調理補助として、キッチンで忙しく動き回るのは、菅原勝浩さん。山形県出身で、「おもや」のグループホームに入居されています。「飲食店で働くのは初めてですが、大きな声を出せないので、出せるように努力しています。自分の調子が悪い時も、頑張ってよりよいコミュニケーションがとれるようにしています」と語ります。
 美術科出身のセンスや特技をいかし、毎週、黒板のメニューを手書きし、店内を彩るのは、勝山利絵さん。「ここは、新しい発想のお店です。精神的な病気のため、しんどい時もありますが、できるだけ声を出すようにすると元気になります。通勤途中、開店前の掃除時と徐々に気持ちを上げていきます。将来は一般就労し、お客さんとしてここに来たいです」と夢を話してくださいました。
 料理長の松岡宏行さんは次のように語ります。「自分の作業を正確に理解し、行うことが大切です。それは、社会に出た時に必要となることです。言葉遣いに気を付ける。できないことは他の人にお願いする。人との距離感をつかむ。周囲の状況も見ながら、作業がスムーズにできるように工夫する。そうやって、できることを積み重ね、自信を持ってもらうことができればと思います」。
今日は友達を連れて来ました。雰囲気もいいし、野菜がとてもおいしいので大好きなお店です。頑張っている、スタッフの行岡さんのファンです。一生懸命さがこちらにも伝わってきます。
男性一人でも気軽に入ることができ、何よりも野菜のおいしさに驚きます。近くにあったら毎日でも通いたいお店です。
藤井 浩さん(草津市)
店舗の営業時間は、月〜木曜日が11時〜18時。金・土曜日が11時〜21時。日・祝日は定休日。11月3日は、市民の皆さんと稲刈りを予定。現在、参加者を募集しています。
■地域の皆さんとの交流のきっかけに
 「『おもや』の野菜を以前から知っていますが、その質は非常に高いです。実際に畑も見学しましたが、野菜への愛情を感じます。野菜作りから販売・飲食店の展開と、連携した仕組みが、障がいのある人が自立するステップになっていて、素晴らしいです」と語るのは、安全・安心や地産地消にこだわり、生産者と消費者をつなぐ事業を県内で展開する河合資さん(写真左)。
 「『その人の持っている良さを見つけ、日々水をあげるように応援する』という福祉は農業に似ています。この作業所が福祉分野から農業分野への架け橋になれば」と「おもや」を立ち上げた施設長の杉田健一さん(写真右)。「オモヤキッチン」を手がけ、人気店となった現在も、「今、展開していることが、障がいのある人と地域の皆さんとの交流のきっかけになり、それが輪になって広がれば」と、だれもが住みやすく、働きやすいまちに向け、夢への挑戦が続いています。
<オモヤキッチン(霊仙寺1-3-24 TEL.596-3713)>
 「おもや」の野菜や果物を使ってデザートを手作りしています。アレルギー対応の卵を使わないクッキーもあり、今の時期は、いちじくのパウンドケーキがおすすめです。今後は、ランチ後のデザートも開発したいです。
 障がいのある仲間は、できることがとても多く、可能性をもっています。「伸びしろ」がたくさんあると思います。
 おいしさは大前提ですので、凝った料理ではなく、規格外の野菜も使い、手間をたくさんかけた日常の料理を味わっていただけたらと思います。
 多くのお客さんと接することが、障がいのある仲間の社会参加につながります。その機会を少しでも増やすため、金・土曜日、21時までの営業を始めました。ぜひ気軽にお越しください。
安全・安心な素材を使い、焼き上げるお菓子「パレット・ミル」
■平成8年、全員無給からのスタート
 観音寺の豊かな自然の中にある「パレット・ミル」。平成8年、森林組合の木工所を借り、木製パレットの補修や木工の仕事から始まりました。全員が無給からの出発で、利用者が自立するための最低賃金の保障を目指して歩んできました。
 4つの事業所を展開する現在は、65人の利用者が働いています。多くの皆さんが関わるお菓子づくりは、「お母さんが子どもたちのために作る時のような、安全で安心なお菓子を」と一貫した思いのもとで、一つ一つ手作りされています。
■その人にあったライフスタイルを応援し合う場所
 「高校生の時に一週間の職場体験をして、ここで働こうと決めました。女の人も多いので、体調が悪いときも無理せずに、気軽に言える働きやすい環境です」と語る、通所2年目の八賀沙季さん。
 オーブンの近くで、タイマーがなる度に忙しく動き回るのが、働いて5年目の奥村聡史さん。「ラスクは3回焼くのですが、設定する温度も時間もそれぞれ違います。焼き上げとなる3回目が一番難しいです」と語ってくださいました。
 徳永里恵さんは、「交通事故で左手が不自由になって以来、8年間ここで働いています。みんな仕事を覚えようと一生懸命です。若い人達には、この場所で自信や社会で通用する力を身につけてほしい」と仲間にエールを送ります。
 「『木製パレット製造工場』を表す施設名は、『みんながいろんな色を持ち寄って夢を描いていこう』という思いを込めて名付けました。ここは、さまざまなハンディキャップを持つ人が自立を目指して働く場です。ずっとここで働き続けてもいいし、自信がついたところで企業に就職してもいい。その人にあったライフスタイルを見つけられるよう、みんなで応援し合う、そんな場所です」と語る、所長の中山みち代さん。色とりどりの個性が集まり、この場所から夢が描かれています。
<パレット・ミル(観音寺139 TEL.558-4500)>
おいしい手作りマフィンは、こんぜの里でしか買えない人気商品。チョコココア、抹茶小豆、プレーンレーズン、プレーンアーモンドの4種類があり、特におすすめはチョコココアです。

■「パレット・ミル」のお菓子は、道の駅こんぜの里りっとう、道の駅アグリの郷栗東、JA栗東市田舎の元気やなどで販売中(「ふなずし飯スティック」は、日本全国の逸品を集めた、秋葉原の「CHABARA」や、びわ湖大津館でのみ販売)。


加工品も人気!「パレット・ミル」のブルーベリー
農薬や除草剤は一切使わず、県の「環境こだわり農産物」認証も受けている、400本のブルーベリー。学校給食にも使用されたこともあり、ジャムやお菓子にした加工品も人気です。

50種類以上の出来たてパンを届ける「第二栗東なかよし作業所『ポモナ』」
■厳選素材を使ったパンの製造から販売までを15人で
 小野にある「第二栗東なかよし作業所」。平成16年に開所した作業所で、ファンが多いのが、パン工房「ポモナ」で焼かれるパンやお菓子です。
 素材を厳選し、生地には添加物を一切使用しないパン作りには、利用者15人が携わり、製造から販売までを展開。平日、早朝から作業が始まり、50種類以上を焼き上げ、グループに分かれて、焼きたてのパンを市内各所に販売に回ります。
■仲間みんなで協力して作り上げるパン
 食パンの生地を鮮やかな手つきでこねるのは、山口育邦さん。「丁寧に手でこねて、ふわふわの状態から空気を抜く所が一番難しいし、気を遣います。毎回不安ですが、上手く焼けるととてもうれしいです」と繊細さが求められるパン作りの難しさを教えてくださいました。
 カレーパンに慎重に具材を詰めていたのが、辻拓也さん。「毎朝6時前に起き、7時にはここに着いています。見た目が悪かったら、お客さんに食べてもらえないので、丁寧に形を作っています。自分の作るパンがこの上なく好きで、夢は宇宙一のパン屋さんになることです」と笑顔が弾けます。
 9年間この仕事に携わり、後輩も指導する田中真喜子さんは「パンを作りたかったので、ここを選びました。焼いたパンの売れ行きはすごく気になります」と販売チームに売り上げを託します。
 思いを受け、通所4年目の椿原充子さんは、おすすめのパンとおいしさのポイントを自身で書いた紙を持ち、お客さんに元気に接客します。
 「朝からの気分、覚え方や性格も一人ひとり違うため、目配り・気配りが大切になります。だからこそ、上手くできたら、みんなで喜びます。『ポモナ』のパンは、仲間みんなで協力して作り上げるパンです」と、パン職人で指導員の小野川智博さん。
 今日も市内各所で、仲間みんなで作り上げたパンのおいしさが、人々を笑顔にしています。
<第二栗東なかよし作業所(小野445 TEL.554-5601)>
パンを買うのはいつも「ポモナ」です。近所のコミュニティセンターで販売がある時は、勝見さんが家まで迎えに来てくれます。どのパンもおいしく、毎回、楽しみにしています。

■ポモナ」のパンは、第二栗東なかよし作業所で、月〜金曜日の16時まで販売中。お気に入りのパンの取り置きも可能。喫茶もでき、利用者による陶芸や刺し子などの芸術にふれながら、ゆったりとした時間を楽しむことができます。

焼きたてパンも販売!「第12回なかよしまつり」
・日時…11月8日(日) 11時〜15時
・場所…第二栗東なかよし作業所
※パンの販売、バザー、ステージ発表、模擬店など。年に一度の楽しいイベントです。

トップページ(目次)へ
次のページへ