栗東市手話言語条例 令和2年3月25日 条例第7号 手話は、言語である。 私たちが人と関わって生きていく上で、言語は、必要不可欠のものである。手話は、ろう者にとって物事を考え、お互いの感情を理解し、知識を蓄え、文化を創造する上で、必要な言語として大切に育まれてきた。手話は、手の形、位置及び動き並びに非手指動作(表情及び身体の動き)により表現され、音声言語とは異なる独自の文法体系を有する言語として構成され、高度な知的活動及び情緒的活動も十分に表現できる言語として使用されてきた。 しかし、手話の歴史をふり返ってみると、手話に対する偏見や抑圧により、ろう者は、言語である手話を奪われてきた。このことは、ろう者の尊厳を深く傷つけ、心理的発達及び社会的地位の確立に大きなさまたげとなった。現在においては、平成18年に国連で採択された障害者の権利に関する条約において「手話は言語である」と明記され、これにより平成23年に障害者基本法が改正され、手話への理解が広まりつつあるものの、言語としての手話への理解はまだ十分に広まっていない。このような状況において、栗東市には、県内で唯一、聴覚障害児が学べる滋賀県立聾話学校が存在し、県下から聴覚障害のある子どもたちが日々学び、過ごしている。こうした教育環境の保障もふまえて、市民一人ひとりが言語としての手話やろう者に対する正しい理解を深めていくことが求められている。 ここに、栗東市は、手話が言語であることの認識やろう者への理解を広げ、手話を必要とする者が安心して暮らすことができるまちづくりを目指すため、この条例を制定する。 (目的) 第1条 この条例は、手話に対する理解及び普及並びに手話を使用しやすい環境の構築に関し、基本理念を定め、栗東市(以下「市」という。)の責務並びに市民等、ろう者及び事業者の役割を明らかにするとともに、市が推進する施策の基本的な方針を定めることにより、手話が言語であることの認識及びろう者への理解を広げ、もって全ての市民等が共生していく社会の実現を目指すことを目的とする。 (定義) 第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 (1) 聴覚障害者 聴覚の機能に障害がある者であって、障害及び社会的障壁(障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。)により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 (2) 聴覚障害児 前号に規定する聴覚障害者のうち、概ね満18歳に満たない者をいう。 (3) ろう者 聴覚障害者のうち、手話により日常生活及び社会生活を営む者をいう。 (4) 市民等 市内に居住し、勤務し、又は在学する者をいう。 (5) 事業者 市内において、事業又は活動を行う個人及び法人その他の団体をいう。 (基本理念) 第3条 手話に対する理解及び普及並びに手話を使用しやすい環境の構築は、次に掲げる事項を基本として行わなければならない。 (1) 手話が言語であるとの認識に基づき、市民等が手話により相互に意思を伝える権利を有し、その権利は尊重されること。 (2) ろう者が、自立した日常生活を営み、主体的に社会参加ができること。 (市の責務) 第4条 市は、基本理念にのっとり、言語としての手話に対する理解を深め、普及させる施策を総合的かつ計画的に策定し、推進するものとする。 (市民等の役割) 第5条 市民等は、基本理念に対する理解を深め、市の施策に協力するよう努めるものとする。 2 市民等は、手話を言語として認識し、ろう者への理解を深めるよう努めるものとする。 (ろう者の役割) 第6条 ろう者は、基本理念に対する理解を深め、市の施策に協力するとともに、手話の意義及び普及に努めるものとする。 (事業者の役割) 第7条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、市の推進する施策に協力するよう努めるとともに、ろう者が利用しやすいサービスを提供し、及び働きやすい環境を整備するよう努めるものとする。 (施策の推進) 第8条 市長は、第4条に規定する責務を果たすため、次に掲げる施策を実施するものとする。 (1) 手話に対する理解及び普及のための施策 (2) 手話を使用しやすい環境づくりに関する施策 (3) 聴覚障害児の手話の獲得に関する施策 (4) その他市長が必要と認める施策 (協議の場) 第9条 市長は、前条各号に規定する施策及び施策の実施状況について、ろう者その他関係者の意見を聞くため、これらの者との協議の場を設けなければならない。 (財政上の措置) 第10条 市は、第8条各号に規定する施策を推進するため、予算の範囲内において、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。 (委任) 第11条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。 附 則 この条例は、令和2年10月1日から施行する。