栗東市市民をつなぐ情報・コミュニケーション条例 令和2年3月25日 条例第8号 人が情報を得て、コミュニケーションをとっていくことは、日常生活又は社会生活を送っていく上で不可欠である。しかし、障害者のコミュニケーションの現状としては、コミュニケーション手段や機会が制限されることにより、意思表示がしにくく、それによって自己決定ができなくなる、又は様々な人の伝達手段に合わせざるを得ないという現状がある。 障害者のコミュニケーション手段は、一人ひとりの状態、程度及び生い立ちにより多様である。平成18年に国連で採択された障害者の権利に関する条約では、コミュニケーション手段には言語(音声言語及び手話その他の形態の非音声言語)、文字の表示、点字、触覚を使った意思疎通、拡大文字、利用しやすいマルチメディア並びに筆記、音声、平易な言葉、朗読その他の補助的及び代替的な意思疎通の形態、手段及び様式(利用しやすい情報通信機器を含む。)があるとし、同条約の趣旨を受け、平成23年に改正された障害者基本法では、手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られることとされた。このような状況を踏まえ、障害の特性に応じたコミュニケーション手段の理解及び利用の促進のための施策が求められている。 ここに、栗東市は、多様なコミュニケーション手段を尊重することにより、人と人が対等に、相互理解を深めていき、障害の有無によって分け隔てられることのない社会の実現を目指し、この条例を制定する。 (目的) 第1条 この条例は、障害者の情報の取得及びコミュニケーションを円滑に行うことについての基本理念を定め、栗東市(以下「市」という。)の責務並びに市民等及び事業者の役割を明らかにするとともに、市が推進する施策の基本的な方針を定めることにより、多様なコミュニケーション手段の理解及び利用を促進し、もって障害者の情報の取得及びコミュニケーションについて支援を行うことを目的とする。 (定義) 第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 (1) 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁(障害者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。以下この条において同じ。)により日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 (2) コミュニケーション手段 手話(触手話及び接近手話を含む。)、要約筆記、筆談、点字、音訳、代筆、代読、指点字、平易な表現、絵図、代用音声(喉頭摘出等により使用するものをいう。)その他障害者が日常生活又は社会生活を営む上で必要とされる補助的及び代替的な手段としての情報並びにコミュニケーション支援用具をいう。 (3) 合理的配慮 障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することのないよう、社会的障壁の除去の実施について行う必要かつ適切な現状の変更又は調整をいう。 (4) 市民等 市内に居住し、勤務し、又は在学する者をいう。 (5) 事業者 市内において、事業又は活動を行う個人及び法人その他の団体をいう。 (6) 学校等 学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第39条第1項に規定する保育所及び子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)第7条第5項に規定する地域型保育事業を行う事業所をいう。 (基本理念) 第3条 障害者の情報の取得及びコミュニケーションを円滑に行うことについては、次に掲げる事項を基本として行わなければならない。 (1) 市民等が対等に尊厳を守られながら、基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されること。 (2) 市民等が多様なコミュニケーションを尊重し、相互理解を深めること。 (3) 市民等が障害者にとって情報の取得並びにコミュニケーション手段の選択及び利用が日常生活及び社会生活を営む上で必要不可欠であるとの認識を持つこと。 (市の責務) 第4条 市は、前条の基本理念にのっとり、多様なコミュニケーション手段の理解及び利用の促進に関する施策を総合的かつ計画的に策定し、推進するものとする。 (市民等の役割) 第5条 市民等は、基本理念に対する理解を深め、市の施策に協力するよう努めるものとする。 (事業者の役割) 第6条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、市の推進する施策に協力するとともに、事業を行うに当たり、障害者が多様なコミュニケーション手段を利用し、情報の取得及びコミュニケーションができるようにするための合理的配慮を行うよう努めるものとする。 (施策の推進) 第7条 市長は、障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第3項に規定する障害者のための施策に関する基本的な計画において、第4条に規定する責務を果たすため、次の各号に掲げる施策について定め、これを実施するものとする。 (1) 多様なコミュニケーション手段の理解及び利用促進に関する施策 (2) 多様なコミュニケーション手段を学ぶ機会の提供及びその取組に関する施策 (3) 市民等及び事業者に対する合理的配慮の実施についての啓発に関する施策 (4) 災害その他の非常の事態が発生し、又はおそれがある場合における障害者の情報の取得に関する施策 (5) 前各号に掲げるもののほか、市長が必要と認める施策 (学校等における取組) 第8条 市は、学校等の教育における多様なコミュニケーション手段に接する機会の提供並びに理解及び利用の促進を図るために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。 (協議の場) 第9条 市長は、第7条各号に規定する施策及び施策の実施状況について、障害者その他関係者の意見を聞くため、これらの者との協議の場を設けなければならない。 (財政上の措置) 第10条 市長は、第7条各号に規定する施策を推進するため、予算の範囲内において、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。 (委任) 第11条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。 附 則 この条例は、令和2年10月1日から施行する。