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庶民の暮らしの足跡が残る住宅
 栗東歴史民俗博物館の敷地に建つ、古い住宅をご存じでしょうか。博物館や図書館を利用する際、今では珍しくなった、葦葺の屋根が見えるので、お気付きの人も多いかもしれません。
 この住宅が旧中島家住宅(国の登録有形文化財)です。建築の様式などから江戸時代の終わりごろから明治時代のはじめごろに建てられたと考えられ、昭和61年まで実際に中島さん一家がお住まいになっていました。もともとは本市の霊仙寺にありましたが、市に寄贈され、平成5年度に現在の位置に移築されました。
 玄関から中に入ると、ニワとよばれる土間が広がっています。ニワに面して部屋が4室設けてあり、上から見ると、まるで「田」の字のように配置されています。玄関に近いほうから、デイ、オクノマがあります。いずれも6畳の畳敷きの部屋で、来客用に使う部屋となっています。
 玄関から奥側には、ダイドコ、ナンドがあります。この2室は中島家の生活空間で、ダイドコは食事を、ナンドは寝起きをする部屋として用いられていました。ナンドは4畳半の畳敷きですが、ダイドコは水を使うこともあり、板敷きになっています。
 このような配置の住宅は、本市を含む湖南地域や湖東地域によく見られる四つ間取り整形型とよばれる間取りです。
 また、草葺の軒周りに瓦が葺かれている屋根の作り方などからも旧中島家住宅は建てられた時代の湖南地域の一般的な農家の住宅の特徴をよく備えています。
 かつての暮らしでは、葬式や披露宴、講の寄り合いなど、家に多数の客が訪れる機会がたびたびありました。この間取りであれば、そうした場合にデイとオクノマの間仕切りを取り去り、12畳の広い空間として用いることも可能ですし、ナンドとの間仕切りを外してさらに広く使うこともできます。
 このように、間取りだけみても旧中島家住宅はこの地域の昔のくらしのあり様を伝える貴重な住宅です。
さまざまな体験に活用されています
■博物館教室「昔のくらし」
 現在、小学3年生が社会科で学ぶ、地域の昔のくらし、昔のくらし調べ、といった単元に対応した体験型のプログラム。毎年、市内のほとんどの小学校3年生が受講しており、市外からも20校以上から来校があり、子どもたちが昔のくらしを学んでいます。
 かまどの火を火吹き竹で吹く体験や、屋根裏にあたるツシに物を上げる体験、雨戸を閉め切った状態でろうそくやランプの明るさを確かめる体験などが行われています。

■博物館体験教室「かまどめしを炊こう!!」
 旧中島家住宅のかまどを活用した体験。旧中島家住宅では博物館敷地に移築した際から、かまどを活用した体験を行っています。平成20年からは厳冬期を除いて、毎月1回かまどでごはんとみそ汁を炊いて食べる、「かまどめしを炊こう!!」を行っています。月によっては江戸時代の東海道目川立場の名物メニューの豆腐田楽を作ったり、戦時中のレシピを再現したりしています。
かまどのヒ・ミ・ツ
 旧中島家のニワ(土間)に設置された、かまど。このかまどは移築時に新設されたものですが、住人の中島家の皆さんの記憶に基づいて、鍋・釜を設置する口の数や形を再現したものです。
 全体が藁スサ入りの土でできていて、形はやや湾曲した勾玉型をしています。口は5つあり、奥から一斗鍋、八升鍋、五升鍋、三升鍋、茶釜が設置できる大きさになっています。
 かまどの口数は多い方ですが、これは京都を中心とした京阪地域にみられる特徴で、湾曲した形状は多数の口を一カ所に座ったまま管理できるよう、効率を求めた結果とされています。旧中島家住宅のような多数口のある勾玉型のかまどは、滋賀県内では栗東市を含む湖南地域に見られます。
 また、栗東市域では土で作るかまどは、左官職人などのプロではなく、家の住人が作ることも多かったようです。旧中島家住宅のかまども、実際に土かまど作りを知る古老とともに、博物館の職員が築いたものです。
ILOVE♡旧中島家住宅
旧中島家住宅とつながりのある市民の皆さんに伺いました。
景観が気に入り、カフェの場所を「ここにしよう!」と決めました。旧中島家住宅にあう外観と店内にし、あたたかでくつろいでいただける雰囲気を大切にしています。博物館横の芝生でヨガをした後、旧中島家住宅のかまどで炊いたご飯と、カフェのカレーを楽しんでいただくイベントも開催しています。今後、この周辺で手作り市やマルシェ(市場)などもできたらいいなと思っています。

「親子フォト」として、お母さんに、子どもがかわいく撮れるコツを教えています。4月には、旧中島家住宅のかまど炊き体験と自然観察の森での撮影会をあわせた企画を行いました。かまど炊きはなかなかできない、とてもよい体験だと思います。旧中島家住宅周辺の素晴らしい環境をもっと市民が気軽に活用できるようになることを望んでいます。

シルバー人材センターの仕事で、当番で旧中島家住宅の管理をしています。掃除、かまどの火入れ、説明などをしながら、来てくださった皆さんが安全に、楽しい時間を過ごしていただけるように心がけています。ここでは、昔、祖母がかまどでご飯を炊いてくれていた光景を懐かしく思い出します。今の子どもたちが、この家で多くのことを学んでくれることを願っています。
かまどで炊いたごはんはおいし〜い!
 「かまどめしを炊こう!!」では、参加者が「かまどチャレンジャー」となり、かまど炊きを体験します。 
 おみそ汁の具は、時には、旧中島家住宅の横にある畑でとれた新鮮な野菜。まき割り、野菜切りから後片付けまで、「かまどチャレンジャー」が協力し、体験を楽しみます。
 5月17日(土)と6月21日(土)の「かまどチャレンジャー」の活躍の一部を写真で紹介します。5月17日(土)の献立は、江戸時代に東海道沿いの目川立場(現在の岡地域)の名物として知られた、豆腐田楽と菜飯の特別メニューでした。かまど体験の日、旧中島家住宅は、いつも、多くの笑顔であふれています。

■8月は、特別献立として、戦時食を体験できます。詳しくは、こちらをご覧ください。

■かまどをはじめ、旧中島家住宅は自治会活動や個人などでも利用いただけます(1時間700円、かまど利用料は1回あたり3,000円)。

■今後の「かまどめしを炊こう!!」の予定など、博物館では、ホームページでさまざまな情報を発信しています。ぜひご覧ください。

問合せ…栗東歴史民俗博物館 TEL.554-2733 FAX.554-2755
http://www.city.ritto.shiga.jp/hakubutsukan/
アットホームな雰囲気が好きで、2〜3年前からこのイベントに来ています。かまどの再生に向けて取り組んでいくと伺ったので、その時はぜひ私たちも参加したいと思っています。
小川さん家族
かまど炊きという、貴重な体験ができ、みんな、とても楽しい時間を過ごすことができました。
大津市から参加の皆さん
3年くらい前からこのイベントに来ています。ここに来るといつもボランティアの皆さんがあたたかく迎えてくださいます。旧中島家住宅は、自分が子どものころ、おじいちゃん・おばぁちゃんの家であった「法事」を思い出すような、とてもくつろげる場所です。この畑でさつまいもなど、さまざまな野菜を収穫し、みんなで楽しく料理することがきっと、子どもの食育にもつながっていると思います。子どもが初めてマッチで火をおこしたのもこの家です。かまど体験で、ボランティアさんに教えてもらいながらでした。本当に多くの体験をさせていただいています。
高島さん家族
初めての参加でしたが、2歳の子どもが思った以上にいろんなことを自主的にやろうとしていて、自分一人でできることが分かった時間でした。
石井さん家族
旧中島家住宅を支えるボランティア
 旧中島家住宅での体験を支えているのが、「栗東歴史民俗博物館市民学芸員の会」の皆さん。「かまどめしを炊こう!!」では、参加者に、まき割りの仕方やかまどの使い方を説明したり、博物館教室「昔のくらし」では、小学生に「さおばかり」を使った重さの量り方を教えたり、参加者を常にあたたかく見守ってくださっています。
◎6月21日 、「かまどめしを炊こう!!」市民学芸員の皆さん
旧中島家住宅横に畑を造成し、ここでとれた野菜をおみそ汁の具に使ったり、お漬け物にしています。市民学芸員の会は、発足してから7年目になりますが、旧中島家住宅は私たちにとって、大切に守るべき場所です さまざまな皆さんが来てくださるので、だれもが楽しい時間を過ごしていただけるように心がけています。畑で育てている綿花と昔の道具である綿繰り機を使い、糸をつむぐ体験を楽しんでもらえるよう、メンバーみんなで取り組んでいます。
楽しんでもらうことを第一に、子どもたちの自主性に任せています。おみそ汁の具となる、じゃがいもやにんじんの大きさが不ぞろいでも大丈夫。調理実習ではないので、楽しい時間を過ごしてもらえればそれで良しだと思っています。 参加者に持ってきていただいたお米を合わせてかまどめしを炊くので、毎回、火加減や水加減などに配慮しています。おいしく炊けたときは、良かったと思うと同時にほっとします。今はスイッチ一つでご飯の炊ける時代。かまどめしならではのおこげは、最高ですよ。
■「栗東歴史民俗博物館市民学芸員の会」ではメンバーを募集しています。詳しくは、博物館まで。
かまどの再生に向けて取り組んでいます
 博物館敷地入り口にどっしりとたたずむ、国登録有形文化財・旧中島家住宅は、地域の歴史を語る貴重な文化財です。移築以来、特集記事にもありますように、かまど(ヘッツイ)や館所蔵の民具を用いながら、昔のくらしなど、さまざまな体験をする場として、博物館ボランティアである市民学芸員の協力も得ながら、子どもたちのみならず、多くの皆さんに利活用していただいています。しかしながら、移築後20年あまりが経過し、移築の際、復元築造されたかまども老朽化が目立つようになってきました。
 この度、実行委員会を立ち上げ、「市民とともに行う栗東歴史民俗博物館旧中島家住宅かまど再生事業」として平成26・27年度の2年で、かまどの解体・再築造を行う運びとなりました。市民参加型のワークショップ方式を取り入れて実施していく予定で、実際の作業は27年度となりますが、本年度はそれに先立ち、栗東市内外のかまどの調査や、これまでのかまどに関する資料の再整理などを行い、それをもとに秋にはシンポジウムを開催し、広くかまどの再生に理解と関心をもっていただきます。
 博物館では、市民皆さんの参加により、かまどを再生し、その経験を、再築造されたかまどをはじめ旧中島家住宅のさらなる利活用や博物館活動へとつなげていきたいと考えています。参加方法や日程は、今後、広報や博物館のホームページなどで随時お知らせします。
 市民皆さんとともに再築造されたかまどのある旧中島家住宅は、栗東の古い歴史に、新しいページを刻んでくれることでしょう。皆さん、ぜひ一度、旧中島家住宅で栗東の昔のくらしを感じていただくとともに、かまどの再生に向けての取り組みにご参加ください。
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