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 2013年9月15日から16日にかけて、栗東市を襲った台風18号。降り始めからの総雨量は436oに達し、死者1人、家屋全壊4棟、半壊13棟、床上浸水12棟、床下浸水127棟などの甚大な被害をもたらし、栗東市にとって決して忘れてはならない日となりました。
 平穏な日々を一瞬にして反転させた台風。この経験から、今後、同じような災害がまちを襲った時、被害を最小限にするために、私たちにできることを考えます。
すぐそこに、危険があった日。
危険と隣り合わせの状況で、地域住民の命を守るために奔走された、皆さんが語ってくださいました。
防災訓練の積み重ねが重要
 9月15日の深夜は停電や、風雨により市の防災無線も聞こえない状況でしたが、幸いにも、携帯電話は使うことができました。状況が分からない中、安養寺山の土砂崩れが発生する前に、役員が手分けして地域を歩いて見回りました。安養寺山が崩れ、二度目の崩壊場所は、15分ほど前にいた所でした。その時の恐ろしい音や光景ははっきりと覚えています。
 台風18号の被害を受けて感じているのは、現場が一番情報が早いということです。市の避難勧告を待つ前に、状況は地域が一番分かっていますので、危険だと感じたら、一刻も早く避難する必要があります。そのためにも、やはり地域で防災訓練を積み重ねることが重要です。徹底して繰り返して行うことで災害時の対応が身につくのではないでしょうか。
 被災された皆さんは、何も持たずにまずは避難されたので、できることをさせていただきました。二次災害の危険もあったので、その後も台風が来るごとに、一軒一軒まわって情報の伝達をしました。復旧は目に見えますが、被災者の心の回復は見えません。自治会内で、多額の義援金が集まり、自治会以外からも多くのお見舞いをいただいたことから、人のあたたかさを実感しています。
 当時、土のう袋が必要だったのですが、市は全市域からの要請に応えきれない状況でした。被害はこの地域だけでなかったことは理解できますが、備えがあれば、自治会で応急対処できることもあります。また、避難所の準備も急がれることから、市には災害時の体制整備や情報の共有、災害後のシステム作りなどをお願いしたいです。
 自治会では、このことをずっと忘れないように、自治会館に被害と復旧状況の写真を掲げています。「台風18号の時はこうだったな」と時を経ても市民が常に思い出せるよう、シンボルとなるようなものも必要ではないかと思っています。
若い世代の多い自治会だからこその「自助」強化
 台風18号に見舞われるまで緊急時の連絡網もなく、防災訓練も、自治会清掃にあわせて行うなど、形式的なものでした。9月15日は、「とりあえず避難を」と言われ、訳も分からない中、避難しました。その後、市の車が住民の皆さんに避難の呼びかけに回ってくださったので助かりました。
 当自治会は、歴史も新しく若い世代が多いため、自治会内の連携は必ずしも十分とは言えません。そのため、現時点では、「共助」よりも「自助」の強化が必要と考え、災害時に重要なこと、自治会でできることを皆で話し合いました。災害時は正確な情報をタイムリーに収集することが重要であるとの意見をもとに、市に対しては、必要な情報は防災メールで流すようお願いしました。住民には、防災メールの登録をするよう呼びかけるとともに、緊急時の連絡先(携帯電話など)を整備しました。その際に「助けが必要な人がいる」「助けられる人がいる」かも聞き、自治会内で支援が必要な人を把握できるようにしました。行政に任せきりではなく、自分たちでできることを迅速に行っていくことが大切だと考えています。
深く実感した、地域の絆
 昭和28年、5歳の時に金勝川の堤防が決壊したことがあり、当時の記憶は今も残っています。金勝川は天井川であるために土手が弱く、危険の認識は常にありました。また、増水は田んぼに影響を与えるため、大雨が降ると、川の様子を確認しに行くことが地域の慣習でした。
 9月16日の5時過ぎに、再確認に行ったときには、堤防が決壊し、ひざ上50pくらいまで水がきていました。堤防を上がると、川が湖のようになっていました。急いで役員などに連絡するとともに、前年度の自治会長と手分けして、危険箇所に住む皆さんを起こして回り、避難するように必死に呼びかけました。その後、自主的に集まった約50人の地域の皆さんと土のうを積んだり、応急対処をしました。台風通過後の後片付けにも約70人が集まってくださったことや、隣の岡地域からも応援があったことから、地域の絆を深く実感する機会となりました。
 災害被害を経験したことで、地域の防災意識が非常に高まりました。防災用具も2箇所に置くようにし、より強い防災組織づくりの取り組みにもつながっています。市には、警報が出たら、空振りに終わってもいいので、住民の命を守るため、早めに避難勧告を出していただくことを望みます。
当たり前のことが当たり前でなくなった
 観音寺は金勝川と端ヶ谷川の二つの川に挟まれており、昔から水害に見舞われてきた地域です。9月15日の夜は、豪雨により外一面が真っ白で、昭和28年の台風のことが頭をよぎりました。過去の経験から、地域の要望で上流に大きな砂防堰堤が設置されており、今回、その堰堤のおかげで地域が救われました。
 断水になってからは、森遊館や森の未来館のお風呂を利用できたので、皆さんの希望を聞いてまわるとともに、お風呂に入る順番を決めました。給水作業は草津市・守山市・野洲市にも協力いただき、とても感謝しています。
 水のこともそうですが、台風18号により、日常生活の当たり前のことが当たり前でなくなりました。未だ復旧していない林道も多く、安心できる避難場所が必要だという大きな課題もあります。観音寺は、地域で助け合う「共助」が、ごく自然にできる地域です。「みんなが仲良く暮らす」という、昔からの素晴らしい住環境を守っていくため、早期の復旧を願っています。
大切な水。
災害時には水道の断水により、普段当たり前に使っている水が使えなくなることもあります。そのような場合に備え、市では給水車や非常災害用井戸を備えています。
災害時に使用できる46カ所の井戸
 市には、非常災害用井戸として46カ所の井戸が登録されています。災害時には、水道が長期間断水となることがあります。この井戸は万が一の際に、所有者の無償提供により、トイレや掃除などの生活用水として、市民の皆さんが使える井戸です。
 地域での防災意識の向上と助け合いを目的に、所有者に協力いただいています。

問合せ
上下水道課 浄水係 TEL.551-0134 FAX.554-3866
■栗東市非常災害用井戸登録一覧
(平成26年7月18日現在)
学区名 所有者など 所在地
治田 小柿八丁目
小林 義夫 小柿十丁目
荒川 粂男
矢野 修
治田東 林 榮太郎 下戸山
治田西 寺井 利夫 下鈎
金勝 鵜飼 幸治 東坂
竹村 利三
青木 安司 上砥山
太田 博
太田 又一
佐野 久新
青木 良視 御園
奥村 市衞門
宮嶋 富造
山本 益造
野 和雄 荒張
野 喜代造
三浦 勝広
三好 定之
葉山東 林 一雄 六地蔵
葉山 武村 静文 高野
竹村商事
青山 佳高  出庭
太田 正
太田 亨
太田 弘明
亀田 貢
國松 剛志
小西 隆
深尾 秀五郎
山本 正
大宝東 中井 栄太郎 蜂屋
大宝 竹島 彊二 綣四丁目
西田 勇 綣七丁目
宮城 要
西田 幸枝 綣八丁目
大宝西 中島 利行 霊仙寺六丁目
尾曲 次男  十里、北中小路
井之口 秀行 十里
木村 勉
木村 良太
駒井 伸二
竹内 喜四男
山元 三男
栗東総合産業(株)
※「所有者など」欄の「−」は本人希望により非公開
「共助」の力。
災害時には、まずは自分の命や財産を自分で守る「自助」。次に、自分たちの地域を自分たちで守る「共助」が大切です。地域の力が大きければ、被害を最小限にとどめることができます。
「共助」の気持ちの見直しを 〜林自治会〜
■地域の企業17社と防災協定を締結
 住民同士が協力して自発的に作る自主防災組織は、地域防災活動の要です。林自治会では、平成19年に自主防災組織を立ち上げて以来、活発な活動を続けています。年1回の総合防災訓練をはじめ、広報の発行など本年度は全体で15回の活動を予定。班別の研修、訓練、安全点検も加わり、防災意識の向上につながっています。
 また、自治会と地域の17社との間で防災協定も締結。地域にある企業や店舗が災害時にはトイレの使用、人的支援、飲料の提供など、できることを支援する内容になっており、「共助」の輪が広がっています。
■震災と水害を想定した組織づくり 
 近くを野洲川が流れる林自治会。台風18号は、水害の危険を考える機会となり、来年度からの組織の見直しが進んでいます。「震災時だけでなく、水害時の組織を別に作ります。また、水害発生時の行動マニュアルも作成し、全戸配布する予定です。昼間に災害が起こった場合を想定し、災害時の経験や知識のある老人クラブの皆さんにアドバイスをもらうことができる組織体制にもできれば」と語る自主防災会会長の武村泰博さんと副会長の渋江弘さん。
 「防災は継続です。やり過ぎるということはない。多くの住民がふれ合い、今だからこそ、『共助』の気持ちをもう一度見直してもらうことのできるよう取り組みたいです」と話してくださいました。
支援が必要な皆さんを地域で守る
◎「災害時避難行動要支援者名簿」を作成
 市では、平成25年6月21日に公布された「災害対策基本法等の一部を改正する法律」に基づき、「災害時避難行動要支援者名簿」を作成しました。この名簿は、災害時や災害発生の恐れがある場合に、自ら避難することが困難な人について、避難の支援や安否の確認などの必要な措置をとるための基礎となる名簿です。
 災害発生時やその恐れがある場合には、この名簿を避難支援者に提供しますが、災害時に迅速・的確な援助ができる体制をとるためには、避難支援者が事前に情報を共有し、把握しておく必要があります。
 今後は、地域における支援体制をつくるため、要支援者から同意を得た上で、日頃から支援者・関係機関で情報を共有する制度「栗東市災害時避難行動要支援者登録制度」の整備を進めていきます。

問合せ…社会福祉課 社会福祉係 TEL.551-0118 FAX.553-3678
視覚障がい者の皆さんによる避難訓練
 5月11日、栗東市視覚障害者福祉協会の皆さんが、栗東駅前のウイングプラザで地震時を想定した避難訓練を行いました。 
「『災害時にもし一人だったら、逃げることができない』という会員の声から実施していただきました。繰り返し訓練をしていただければ」と語る会長の中尾恭夫さん。「誘導の仕方など、視覚障がい者の皆さんからさまざまなことを教えてもらい、今後の課題も多く見つかりました。災害時に、支援が必要な人々をどのようにサポートしていくか、関係機関と課題を共有し、理解を深めながら一歩一歩積み重ねていくことが重要です」と語る中消防署・防災指導係長の佐山良則さん。
 支援を必要とする皆さんが避難する場合には何が重要か、今後につながる第一歩となる貴重な訓練となりました。
災害に強いまちづくり
台風18号の経験から、市民の皆さんの大切な命や財産を守るため、市ではより一層の防災力向上のため、取り組んでいます。
支援が必要な皆さんを地域で守る
◎「総合防災マップ」の全戸配布
 今月号の広報と同時に配布しています。滋賀県などの最新の情報・データに基づいた「風水害・地震ハザードマップ」により、市内で発生が予想される災害に対する知識と備えをまとめています。
 また、今月号の広報の折込みで、「栗東市防災カード」を配布しています。切り取って、万が一の場合に備え、常に携帯してください。
◎「地域防災計画」の見直し
 平成18年度に全面見直しを行った「地域防災計画」を国の災害対策基本法の改正を受け、平成25年度に再度見直し、より現状に合わせた計画としました。
◎災害時の情報発信手段の強化
 災害時の情報発信手段として、同報系防災行政無線、同報系防災無線自動応答電話システム、防犯・防災関連情報メール配信システム、エリアメール、ホームページ、フェイスブック、広報車による広報があります。災害発生時には、現状利用が可能なシステムを最大限に活用して情報伝達に努めます(詳細は「総合防災マップ」12ページ)。
 同報系防災無線は、「聞こえにくい」という声を受け、現在、音達状況の調査を実施しています。今後、調査結果により、難聴エリアへの改善策を考えていきます。
◎エリアメール・緊急速報メールの配信
 平成25年10月11日から、避難準備情報や避難勧告を、より多くの皆さんにお知らせできるよう、NTTドコモの緊急速報「エリアメール」、auおよびソフトバンクの緊急速報メールの運用を開始しました(詳細は「総合防災マップ」13ページ)。
◎防災士の育成・防災指導員の配置
 地域防災力を高めるために、専門的な知識を取得した防災リーダーの育成に努めます。本年度から3年をかけて、自治会、自主防災組織役員、消防団員などを対象に毎年50人、全自治会に1人の防災士育成を目指し、取り組みを進めています。
 また、本年度から、防災防火に関する知識や経験、技能を有する「防災指導員」を危機管理課に配置しています。出前講座などで地域の実情に応じたアドバイスや防災訓練の指導を行っています。
問合せ
危機管理課 総合防災・危機管理係 TEL.551-0109 FAX.551-0149
〜大槌町派遣職員から〜
自然災害から学んだこと
 栗東市をはじめ多くの地域に被害をもたらした昨年の台風18号は、皆さんの記憶に新しいことと思います。自然災害は、いつ、どこで起こるか分かりません。私は、市職員として、東日本大震災の復興支援の命を受け、岩手県大槌町へ三カ月間赴任しました。
 海岸線に位置する大槌町は震災で役場も壊滅する甚大な被害を受けた町の一つで、私の赴任中も幾度となく余震が続き、震度4以上では高台まで職員も住民も避難するといった状況でした。
 復興の仕事をさせていただく中、当時の話を大槌町職員に聞いたり、住民の皆さんの厳しく苦しい生活を目の当たりにしたことで、私は市職員としてだけではなく、一人の人間として防災を考えるようになりました。私の考える防災とは、災害は起こることを前提に備えをするとともに、有事の際にどのように対処して行くかを考えることだと思います。行政と地域が連携することはもちろんですが、地域内でも日頃から隣近所に声を掛け合うなどの密な関係を築く必要があります。自分一人ではなく、他の多くの人々に支えられて生きていることを私たちは改めて認識しなければなりません。
 東日本大震災で大津波が町を襲った時、中学生が小さな子どもたちを背負って高台に逃げ命を守ったそうです。人を救うのは人であるということ、その大切な教えを一人でも多くの人々に伝えることが、私の市職員として、一住民としての務めだと思っています。その大切な教えを伝えていくため、取り組んでいきたいです。
教育委員会 教育総務課 課長補佐 奥村薫
■台風11号で避難勧告
 8月9日から10日に台風11号が来襲した際、市では災害対策本部を設置し、24時間体制で被害状況の確認や情報収集などにあたりました。
 9日昼、安養寺レークヒル自治会と安養寺山下戸山側地域の合計176世帯607人に避難準備情報を発令。夕方には、避難勧告を出しました。幸いに大きな被害はありませんでしたが、今後も市では気象状況に注意し、迅速な判断で、市民皆さんの安全を守ることができるよう、取り組んでいきます。
まち全体で防災力アップ
※最近の取り組みの一部を写真で紹介します。
「安全・安心なまちづくり」をいっそう強化
 昨年の台風18号では、市内で記録的な集中豪雨となり、土砂災害でお一人の尊い命が失われるという非常に残念な事態となりました。また、河川堤防の決壊や市内道路の冠水、家屋の浸水や農業被害など、本市は甚大な被害を受け、自然災害の脅威を改めて思い知らされました。この台風18号の影響による災害被害からの一日も早い復旧・復興に向けての取り組みを、本年度も施策の重点項目として掲げ、進めています。
 台風18号による被害を経験したことにより、市でも情報発信、避難勧告・指示の方法や時期など、市民皆さまの声からも多くのことを学ばせていただきました。この経験から、地震や豪雨被害など、いつどこで発生するかわからない自然災害に対する「安全・安心なまちづくり」のため、一層の取り組みを進めています。民間企業や各種団体などとの災害応援協定の締結をはじめ、自治体間での応援協定の締結、近隣4市(栗東市・草津市・守山市・野洲市)が合同で消防・防災訓練を行うなど、つながりを大切に、広域で連携して相互が助け合う取り組みにも力を入れています。
 一方で、災害発生時には、まずは自らの安全を確保すること、そして地域を守るために、皆さま一人ひとりが日頃から防災意識を高めていただくとともに、自主防災組織の活動を活性化していくことも重要となります。
 今後も、一日も早い復旧・復興のため、全力をあげるとともに、「自助」「共助」「公助」の強化により、市全体で災害に強いまちを築くことができるように進めます。市民皆さまの安全安心な暮らしを守ること、つまり、「いつまでも住み続けたくなる安心な元気都市栗東」の構築に向けて、引き続き全力で取り組んでいきます。
市ホームページで、台風18号の復旧状況に関する 市長メッセージを動画で配信しています。
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