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夢描く、栗東発のミュージカル
 平成11年に開館した栗東芸術文化会館「さきら」。芸術文化の発信拠点として、栗東を中心にした歴史や文化を題材とする、栗東ならではのミュージカルが上演され続けています。 
 毎回、観る人を大きな感動の渦に巻き込みながら、今、記念すべき第10回の幕が上がろうとしています。
舞台はさきら。栗東独自の脚本をプロの指導で市民が演じる。
■さきらの開館記念としての上演が始まり
 「さきら創造ミュージカル」が初めて上演されたのは、平成12年。「まちづくり、人づくりの拠点」「芸術文化の受発信の拠点」「交流の拠点」を基本理念としたさきらの開館記念として、市民参加型の子どもミュージカルが企画されたことに始まります。
 ミュージカルは、音楽、歌、せりふ、ダンスを組み合わせた演劇で、幅広い演技力が要求されます。当時、プロの演出家が脚本を書き、プロの音楽家が作曲し、それを地域の子どもたちが演じることは、全国で珍しい例でした。
 出演者219人をオーディションで決定し、1年半をかけてできあがった舞台が、金勝山で展開される栗東の民話を題材にした作品「未来への約束〜栗の木の東の国で〜」。上演された舞台は評判を呼び、翌年、メンバーを改めて募集して、再演されました。
■栗東ならではのミュージカルを発信
 平成14年には、第3回の創造ミュージカルとなる「天河を越えて〜我想飛越銀河〜」が上演。これは、本市の友好都市である中国湖南省衡陽市でも演じられました。作品は本市と衡陽市の子どもたちの交流が描かれ、出演者は中国語も練習。実際に衡陽市を訪れての上演は感動にあふれ、国境を越えて、ミュージカルをとおして心と心が通い合う時間となりました。
 以来、創造ミュージカルの上演は今日まで続いています。第1回から変わらないのが、さきらを舞台に、栗東独自の脚本をプロの指導により市民が演じるというスタンス。栗東ならではのミュージカルが発信され続けています。
まちの文化をはぐくみ、夢ある未来を描き続ける。
■上級者クラスの開設で中核となる人物を育てる
 平成26年には、新しい試みとして、舞台演劇やミュージカルの演技力向上を目指す「ステップアップメンバー」を募集。創造ミュージカルの経験がある人を対象にした上級者クラスが開講されました。この成果発表として、メンバー13人により、「森のコンシェルジュ」が上演。より高度な舞台を学んだメンバーには、今後、「さきら創造ミュージカル」の中核となる人物としての活躍も期待されています。
■職業や年齢の違う人々が集い、創り上げる魅力
 2月6日・7日に公演される、10作品目の物語は、「水神姫の涙」。「びわ湖はかつて山だった!」という驚くべき古くからの言い伝えを元にした涙と笑いの異世界ファンタジーです。
 出演者は小学4年生以上を対象に募集され、7月にオーディションが行われました。今回から、「演技・歌」「ダンス」のどちらを中心に演じたいかを希望できるようになり、82人のキャストが決定。8月・9月の4日間開催されたワークショップで、ミュージカルの基本などを学習し、9月から本番まで、30回の稽古に励んできました。
 「ステップアップメンバー」の一人であり、今回、水神姫役を務める橋紘子さんは創造ミュージカルの魅力を次のように語ります。「もともと舞台が好きで、劇団に入っていました。結婚を機に栗東に来て、このミュージカルを知り、またやりたいなと参加しました。魅力は、だれもが参加できるところにあると思います。公募により、職業や年齢も違う人々が集い、同じ仲間としていろんなことを共有しながら、みんなで創り上げていく楽しさがあります」。
 観客として感動し、次回は出演者を目指してオーディションを受ける人、親子で参加する人、プロを目指す人…。「さきら創造ミュージカル」に魅了され、出演を希望する人は多く、ここでの経験から、全国的に活躍する人も出てきています。
 芸術文化の発信拠点「さきら」で上演される栗東発のミュージカルは、まちの文化をはぐくみ、夢ある未来を描き続けています。
 より質の高いミュージカルを目指して、指導する二人にインタビュー
脚本・演出・作詞
みつ輪りんさん
(栗東市在住で、現代的な舞台を多数企画・演出)

 今回をはじめ、第8回・9回の創造ミュージカル、ステップアップメンバーによる公演の脚本・演出に携わっています。今回のミュージカルは、いろんな年代のキャストが出ているので、自分と重ね合わせながら、幅広い世代の皆さんに楽しんでいただける内容になっています。
 「さきら創造ミュージカル」はだれもが主役です。メンバーを見てからキャストを決め、せりふは出演者をイメージし、考えます。このため、台本は何度も修正します。市民ミュージカルといえども、チケットは有料です。分かりやすいことを第一に、少し考えていただくことが必要な部分も織り交ぜながら、お客さんに満足してもらえるレベルのものを創り上げることができるようにしています。
歌唱指導
橘 千佳さん
(音楽専門学校や劇団のボーカル講師などで活躍中)

 第1回から毎回、歌唱指導を担当しています。
 ミュージカルは、歌だけが別にあるものではなく、せりふや言葉と一体となって伝わるものです。このため、歌の中にある一つ一つの言葉がしっかりと観る人に伝わる指導をしています。本番までの課程で、出演者の成長やよりよい舞台になっていく様子をはっきりと感じ取ることができるのが喜びです。今回の舞台は、感情をむき出しにする所、抑える所とバラエティに富み、見所もたくさんありますので楽しみにしていてください。
 市民ミュージカルとしてこれほどまでに長く続いていることは誇りです。栗東からミュージカルの輪が広がっていることが、とても素晴らしいことです。
みんなで創り上げる楽しさ。「さきら創造ミュージカル」の魅力。
 今回の「水神姫の涙」には82人のキャストと多くのスタッフが関わっています。初めて出演する人、ずっと出演し続けている人…。そのきっかけや魅力を聞きました。
 演じることが楽しくて、12年前の第4回の時から1作品を除き、毎回出演しています。息子とは前回から共演し、娘も小学4年生になったので、今回は親子3人での共演がかないました。普段とは違った子どもたちの姿を見ることができるのではないかと思って2人を誘いました。
 仕事で忙しいことが多いので、このミュージカルをとおしてコミュニケーションを取りたいです。
左から 南出治義さん・娘の明日風さん・息子の義月さん(栗東市)

 ステージに立つことが大好きで、ほぼ毎回出演しています。劇団「山の動く会」の一員として「りっとう演劇祭」にも参加していますが、このミュージカルは、プロの先生方から指導を受けられるので、レッスンは、今後の自分につながる貴重な時間です。
 「さきら創造ミュージカル」は、演技・歌唱・ダンスの三拍子に加え、生演奏のバックアップもぜいたくで、私の願いを全て叶えてくれるところ!これまでに多くの仲間もでき、人の輪がますます広がっています。
奥村敏子さん(栗東市)

 劇団四季のミュージカルを観て、「生身の人間にこんな演技ができるんだ!」と感動し、中学2年生の時に、初めて創造ミュージカルのオーディションを受けました。
 今回は、ボランティアスタッフとしても携わり、せりふを忘れたキャストを助ける役目なども担っています。春からは社会人です。就職しても、大好きなミュージカルにずっと関わっていきたいです。
桐村 菜穂美さん(栗東市)

 初出演で主役を務めた前回は、楽しみながら納得できる演技ができました。今回は演出の補佐役として舞台に関っています。
 初めて出演する子どもたちが練習する度に上手になっていくのが実感でき、私自身、教わることが多いです。
並床美弥さん(栗東市)

 今、小学5年生です。ミュージカルをしている友達の影響もあり、今回初めて応募しました。隣のまちにこのようなミュージカルがあってうれしいです。
 家ではなかなか大きな声が出せませんが、ここなら、思いっきり声も出せます。みんなで創り上げていくのが楽しいです。
川那辺 紗名さん(守山市)
 栗東から発信!まちが誇る演劇文化「りっとう演劇祭」

※写真は、平成26年度の「飛び出す演劇祭」。「山の動く会」の演じた「かさこじぞう」では、会場にいた葉山東学区の皆さんも飛び入り参加し、盛り上がりました。本年度の詳細は、こちらをご覧ください。

 「さきら創造ミュージカル」とともに、栗東の誇るべき演劇文化の一つが「りっとう演劇祭」。平成5年の開催以来、市民手作りの舞台が展開されています。平成27年7月19日には、第22回を開催し、7団体が熱演しました。
 平成25年度からは、栗東演劇祭実行委員会により、地域の皆さんとともに創る「飛び出す演劇祭」も開催されています。だれもが気軽に楽しみ参加できる演劇文化を根付かせる取組みは、文化・経済フォーラム滋賀による「2014文化で滋賀を元気に!賞」で「演劇でまちづくり文化賞」を受賞しました。
 劇団「山の動く会」の代表であり、栗東演劇祭実行委員会の会長を務めるのが、前山茂治さん。
 「舞台は、主役だけで演じられるものではありません。出演者全員、また、観ているお客さんも含めて、みんなで創り上げていく楽しさがあります。道具も手作りし、『演じて、おもしろかったね』で終わりではなく、より質の高い演劇祭になるように取り組んでいます。『さきら創造ミュージカル』出身でNHKの連続テレビ小説に出演された役者さんもいます。そういった方を見て、『自分もできそう』『頑張ろう』と向上心を持って取り組めば、俳優になれる可能性もあります。また、そうした人が多く出れば、栗東の演劇熱も高まります。若い皆さんが、この素晴らしい栗東の演劇文化を継承し、興味関心を持って夢を叶えてくれればうれしいです」と話してくださいました。
栗東から全国へ。「さきら創造ミュージカル」が生んだスター。
 「さきら創造ミュージカル」の出演を機に、演じることの楽しさにひかれ、プロとして全国的に活躍するお二人。二人から10回目の開催を祝して、思い出を綴ったメッセージをいただきました。
真衣 ひなのさん
(宝塚歌劇団 星組)
平成21年、第95期生として宝塚歌劇団に入団して以来、娘役として活躍。
「さきらミュージカル」は、第3回・4回・5回と連続出演。
 私が「さきら創造ミュージカル」に出会ったのは小学校高学年の時、「当たれ!宝くじ」という作品でした。初めて「オーディション」を受けた時のドキドキ、今でも思い出します。キャスティングが決まるまでの不安と期待が入り混じった気持ちも、きっと経験した者にしか味わうことのできないものでしょう。そして一つの作品を作りあげるために、演出家の先生、作曲家の先生、歌唱指導ダンス指導の先生、美術さんやスタッフの方々との関わりがあり、いろんな年齢層の共演者との関わりがあり、「さきら創造ミュージカル」に参加したからこそ出会えた人たち、発見できたことがたくさんありました。本番に向かって、皆が自分の課題に取り組む過程はとても美しいと感じました。
 そんなかけがえのない時間を求めて私が翌年、翌々年もオーディションを受けたのは、あの場所に引き寄せられたようで、「ふしぎな馬」「クロースニットファミリー」も前作と同様忘れられない出演作となりました。そして夢だった宝塚歌劇団に入団できたのも、さきらで学ばせていただいた経験があったからこそだと思いますし、入団してからも、それは私の支えになりました。
 無意識に「さきら創造ミュージカル」の歌を口ずさんでしまう時、あの時間が、あの空間が、あの舞台が恋しくなります。宝塚の舞台に立ちながらもそう感じるのは、それだけ私にとって「さきら」は特別な場所だったということでしょう。きっとこのミュージカルに関わった全ての人にとってそうであるに違いないし、これからもずっとそうであってほしいです。さきらに出会えて本当に幸せです。
 「水神姫の涙」に出演される皆さま、舞台の成功を心よりお祈りいたしております。
大塚宣幸さん
(ワタナベエンターテイメント所属)
NHK連続テレビ小説「マッサン」「ごちそうさん」や、多くの舞台で活躍。
「さきらミュージカル」は、第2回・3回・5回に出演。
 私の「さきら創造ミュージカル」との出会いは15歳の頃。「天河を越えて」という作品でした。 周りに同年代がおらず戸惑いと不安に駆られていたことを今でも覚えております。しかし稽古を重ねるにつれ、さきらに行くのが楽しみになっている自分がいました。そうさせてくれたのは、逝去された演出の生田智章氏を初めとする、プロのスタッフの皆さまが一丸となり、稽古から本番までを常に良い環境に整えてくださったからでしょう。
 この作品がきっかけで、私は今舞台を中心とした俳優やタレントの仕事をしています。未経験の無知な若者が初舞台で主演をやらせてもらい、さらには海外公演まで経験できたことがどれだけ恵まれていたことなのか、この世界に入ってつくづく感じます。ここでの経験は、私のように俳優の道に進まずとも、年齢を問わず必ず何かしら今後の人生の糧になるはずです。私自身も表現者として、演劇やエンターテイメントで皆さまの生活に何か少しでも影響を与えたいと常々思っております。
 「さきら創造ミュージカル」はそれらの可能性に満ちあふれている素晴らしい場所です。開館か ら16年経つ今でも開催されていることは大変誇らしいですし、今後も成長して多くの方々に認知されて欲しいと心から思います。全ての方々の記憶と記録に残りますよう、OB としていつも応援しております。
 あ、これを読んでいただいた方はぜひ観に行ってあげてくださいね♪
舞台からあふれる情熱。ぜひ今回の「さきら創造ミュージカル」を体感してください!
<さきら創造ミュージカルvol.10 Anniversary「水神姫の涙」>
■日時…2月6日(土)17時〜・7日(日)11時〜、16時〜
■場所…さきら中ホール
■入場料…一般2,000円、大学生以下1,000円
     (全席指定、託児サービスあり)
■問合せ…さきら TEL.551-1455 FAX.551-2272
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