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音楽のあふれるまち
 「音楽は設備が整ったホールでしか楽しめない」という考えは今や昔。今、栗東では、屋内外を問わず、さまざまな場所で音楽を気軽に楽しむことができる活動が展開されています。
 「もっと身近に音楽を楽しんでほしい」。共通の思いと努力で、おなじみの場所に心地よいメロディーが奏でられています。

市民による手作りの音楽会がまちを元気にする
安養寺山音楽会
音楽でまちを元気に!思いを一つに集う
 4月3日になごやかセンターで開催された「安養寺山音楽会 プランタンコンサート」。コーラス、管楽器演奏、独唱など10組が多彩な演奏を披露しました。100人を超える来場者からは、「身近にいろいろな楽器や音楽分野の演奏が聴けるのが楽しい」「あたたかな雰囲気がよかった」との声が聞かれ、大好評に終わりました。
 安養寺山音楽会が発足したのは、平成25年。「音楽活動の成果を発表する場をつくりたいと治田東地域の音楽愛好家が集いました。当時、台風18号による被害で、無残な姿になった安養寺山を見て『音楽でまちを元気にしよう』と思いを一つに、『安養寺山音楽会』と名付けました。以来、プロやアマチュア、年齢や性別、音楽ジャンルにとらわれず、だれもが気兼ねなく参加でき、日ごろの練習の成果を披露できる場になればと活動しています」と語る、代表の奥野達夫さん。
 現在は、子どもたちのコーラスグループも含めて、メンバーは約80人に増えました。年に1度、春に開催される音楽会を中心に、下戸山はなもも市などの市内イベントにも出演。美しいメロディーでイベントを盛り上げています。
 音楽会は、出演者も来場者も、幅広い年齢層が集い、音楽の楽しさを身近な同じ空間で共有できるのが特徴です。本年度は市の「元気創造事業」の採択を受けて活動。メンバー同士の交流から、新たな共演も生まれています。
安養寺山音楽会facebook…https://www.facebook.com/ongakkai/
子どもたちを育てる音楽会
 「安養寺山音楽会 プランタンコンサート」に出演した最年少は3歳の女の子。歌の大好きな子どもたちのグループ「B-Friends」の一員です。「緊張するけど、みんなで歌うと気持ちいいし、たくさんの人に聴いてもらえるのがうれしい」とメンバーの一人は話してくれました。
 「人前で発表することで、自信がついたり、音楽の楽しさを再確認できるので、子どもたちのためにある場と言っても過言ではないかもしれません。将来につながればうれしいです」と語る、副代表の吉田収さん。また、同じ副代表の久野村優子さんは「出演する子どもたちのひたむきさに感動します。会場に来た子どもたちも音楽を楽しみながら、『自分もやってみよう』と思ってもらえたらうれしいです」と話してくださいました。
小さな活動がまち全体に広がる
 「メンバーには若い人も多く、会場づくりなど、自分たちにはない視点を持ってくれているので、新たな発見をさせてもらい、楽しいです。いつもアイデアを出し合っています。飾りの作製、受付、撮影など、ボランティアで手伝ってくれる人も多く、まさに手作りの音楽会です」と続ける、吉田さん。
 「映画音楽を映像と生演奏で楽しむ企画も面白いかもしれません。技術向上のため、出演者がプロの指導を受けたり、会場づくりを勉強することで、よりよい音楽会を目指したいです。ただ続けるのではなく、常に新鮮な音楽会を開催するため、楽しみながらみんなで考え、工夫していきたいです」と久野村さん。
 「治田東地域から始まった小さな活動が、仲間が増え、少しずつまちに広がっています。活動をとおして、新たなつながりが生まれるとともに、個々の力が一つになり、大きな力になっています。資金面などの課題はありますが、安養寺山の裾野が広がっているように、私たちの音楽も広がり、まちを元気にできたら」と語る奥野さん。
 安養寺山の復旧と同じように、緩やかに着実に、音楽を楽しむ輪が広がっています。
音楽会でおじいちゃんと共演 〜ずっと音楽に関わっていくことが夢〜
 おじいちゃんが安養寺山音楽会にも出演するバンド「Black Face」のメンバーです。ギターを始めたのは、小学1年生の時。週末、おじいちゃんの家に行き、教えてもらっていました。今は、秦基博さんの曲が大好きで、よく演奏します。
 安養寺山音楽会には、弾き語りや「B-Friends」などで出演しています。第1回では、「Black Face」とフォークソングで共演できて、うれしかったです。昨年のいちょうまつりでは、タコ公園で弾き語りをしました。野外で全力で歌い、すがすがしい気持ちでした。出演日まで一生懸命に練習します。本番は緊張しますが、楽しさのほうが大きいです。
 ギターの音の響きは、あたたかく心地よいので安心します。毎日、ギターに触れています。いつか、自分自身が作詞・作曲したオリジナルソングを演奏できたらと思います。ずっと音楽に関わっていくことが夢です。
音楽振興会と博物館が協働でまちにメロディーを届ける
RISSミュージアムロビーコンサート
協働で可能性が広がる
 毎回、約100人の来場者がある「RISSミュージアムロビーコンサート」。栗東音楽振興会(RISS)と栗東歴史民俗博物館が平成22年から協力して開催し、24回を数えます。コンサートの舞台となっているのは、博物館のロビー。「本格的な演奏が無料で楽しめる」「気軽で堅苦しくない雰囲気なのがいい」とファンも多い評判のコンサートです。
 「より身近に音楽を楽しんでいただこうと始めましたが、博物館のロビーは音響もよく、舞台と客席も近いので、思った以上に演奏会場にふさわしい場所でした。人生の中で音楽に親しんでいただく時間はとても大切です。無料で心地よい音楽を楽しんでいただくため、多様な演奏家に来ていただいています」と音楽振興会事務局の森岡節子さん。
 「芸術文化の発信拠点の一つが、栗東駅前のさきらです。一方で博物館のある場所も市の文化ゾーンに位置づけられています。地域的にも、さきらに加え、ここでコンサートができることは意義深いです。隣接する図書館とも連携し、コンサートの開催を看板設置やアナウンスなどで案内しています。博物館の展示を見ていただくきっかけにもつながっています」と博物館の松村浩館長。双方が連携することで、互いの事業への理解が深まっています。
<RISSミュージアムロビーコンサート25>
・7月24日(日) 14時〜、博物館にて
・出演者…村中 宏(ファゴット)、笹 まり恵(ピアノ)
※ファゴットの説明もあります
・問合せ…栗東歴史民俗博物館 TEL.554-2733
旧中島家住宅を舞台に
 ロビーコンサートの新たな試みが、博物館にある国の登録有形文化財「旧中島家住宅」を舞台にしたコンサート。平成26年はマリンバ演奏と民話、平成27年は歌・フルート・ピアノ・舞いの共演が企画され、いずれも200人近い来場者が秋の夕べを楽しみました。
 「年間4回のコンサートを企画しており、会場設営は、音楽振興会の会員や博物館の市民学芸員の会の皆さんなどがボランティアで協力してくださっています。設営の大変さも素晴らしい音楽で癒されます。今後は、さきらジュニアオーケストラの出身者にも演奏してもらうことができたら」と続ける二人。身近に音楽を届けるため、連携した取組みは今後も続きます。
いつでも、どこでも、だれとでも、みんなが一緒に音楽を
 一昨年8月3日、第17回のロビーコンサート「はぎのさんちのコンサート〜夏の思い出〜」で、懐かしい日本の歌をお届けしました。声楽家の娘と共演し、私はメゾソプラノ、娘はソプラノで「浜辺の歌」などを歌いました。会場はお客さんとの距離も近く、皆さんの胸にある思い出をつないでいくことができたらと思いながら歌いました。
 昭和62年、「一人でも多くの人に音楽を好きになってほしい」と市内に音楽ホールを開設しました。平成12年には、音楽を中心にした芸術文化の普及・振興を目指し、NPO法人ブラームスホール協会を設立し、理事長として、全国で1500件以上の事業に取り組んできました。
 音楽にプロ・アマチュアの境目はなく、目的が明確であれば、演奏場所は限定されないと感じています。いつでも、どこでも、だれとでも、みんなが一緒に音楽を楽しめる環境づくりのために、今後も活動していきます。
わがまちのオーケストラが夢を運ぶ
さきらジュニアオーケストラ・アカデミー
議場やお寺で音楽演奏
 3月24日、市議会の議場に美しいメロディーが響き渡りました。本会議の休憩に合わせ、演奏したのは、栗東芸術文化会館「さきら」を拠点に活動する「さきらジュニア・オーケストラ・アカデミー」。議場で演奏されたのは、本市初めての試みでした。弦楽合奏曲など計4曲を演奏し、「開かれた議会」につながる取組みとなりました。
 5月28日には、「梅ノ木立場あかりの演出2016」にも出演。浄玖寺、法界寺、福正寺で演奏し、「地域のお寺での演奏が新鮮」「子どもたちが奏でる素晴らしい音に感動した」と来場者から好評でした。
 アカデミーは、ジュニアオーケストラの結成を目指して平成17年に開校し、平成22年、念願の「さきらジュニアオーケストラ」が誕生。現在、市内外の小学1年生から高校3年生までの83人が月3回の練習に励んでいます。年に一度の定期演奏会・成果発表会を中心に、今年から市内演奏も積極的に行い、腕を磨いています。
<さきらジュニアオーケストラ定期演奏会>
10月9日(日) 15時〜、さきらにて
※詳細は今後の広報に掲載します。
受け継がれる伝統と新たな夢
 子どもたちが指導を受けているのは第一線で活躍する講師。開校以来アカデミーの校長を務める藤井允人さんは次のように語ります。 「作曲家の心をイメージし、自分の意思として音楽が表現できるよう、楽譜を正しく読むことに力を入れ指導してきました。結果、子どもたちならではの大人には真似が出来ない表現が生まれ、よく知るはずの曲でも新鮮な演奏で感動させられます。みずみずしい才能に逆に私が勉強させられることも多いです。アカデミーを巣立ち、音楽大学へ進む子どもたちも出てきました。本アカデミーも11年目を迎え、さきらならではの伝統が受け継がれているとも感じています。指導者として戻ってきてくれる子が出てくるかもしれません。夢が広がります。今後はいっそう市と連携して音楽を身近に感じていただく機会を広げたいです」。
 栗東から生まれたオーケストラが、まちに新たな夢を運びます。
夢を奏でる
受講生にインタビュー
アカデミーでバイオリンを弾いている妹の姿を見て、楽しそうだったので、自分もやってみようと思いました。小学4年生の時から頑張って練習しています。きれいな音を出せた時はすごくうれしいです。お寺での演奏は楽しかったです。将来も音楽を続けていきたいです。
右:<チェロ・有本隼大さん(市内中学1年生)>
さきらジュニアオーケストラの演奏を聴いて、「私もやってみたい!」と、小学2年生の時に入りました。みんなで音を合わせることが楽しいです。ジュニアオーケストラとして定期演奏会に出ることが夢です。
左:<バイオリン・向内愛珠さん(市内小学4年生)>
 紹介したのは一例ですが、学校の部活動や消防音楽隊など、まちでは、多くの音楽活動が行われています。音楽活動に関わる皆さんは「聴いてくれる人がいるからこそ、よりよい演奏をしようと努力する」と口を揃えます。
 身近に流れる音楽にゆっくりと耳を傾けてみませんか。まちの音楽文化は、ともに楽しむ人が増えることで、今以上に育まれ続けていきます。
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