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栗東ブランドに乾杯
「栗東くり太郎かぼちゃ」「こんぜ清流米」のお酒。
地産地消を進め、地域に夢を与える。
 純米酒「金勝」、かぼちゃ焼酎「金勝」は、「こだわりの農作物から栗東ならではの特産品を作ろう」と、市内の生産者・酒造メーカー・農業協同組合の3者が連携して誕生しました。
 「栗東ブランド」として新たに生まれたお酒は、農業の可能性を広げることにつながっています。

写真@「焼酎には出荷するのと同じレベルのかばちゃを使用しています」と右から山元新一郎組合長、太田一さん、佐野貞雄さん
写真A焼酎にするため、手作業でかぼちゃを8等分し、種とワタを取ります
栗東にちなんだブランド野菜が焼酎に
 かぼちゃ焼酎「金勝」の原材料、「栗東くり太郎かぼちゃ」。このかぼちゃは、「栗東ブランド」として特産化に向けた栽培研究が繰り返され、平成26年度から本格的な出荷が始まりました。「くり太郎」という品種で、栗のようなホクホク感と甘みが特徴。栗東市内の平成28年産の栽培面積は約3000uです。
 栗東くり太郎かぼちゃを使った焼酎が誕生したのは、昨年10月。JA栗東市の合併50周年記念に合わせて、企画・販売されました。原材料には、農事組合法人 上砥山営農組合のかぼちゃ500sと栗東産のお米200sを使用し、収穫したかぼちゃの下処理も関係者が1日かけて実施。製造された720ml900本が完売しました。
出荷レベルのかぼちゃを使い、焼酎のお米も栗東産
 「今年は営農組合全体で1500u、350株のかぼちゃを手間をかけて大切に育てています。今年も毎日手で受粉させ、かぼちゃの下に1枚1枚、計約2000枚のクッションを敷きました。昨年の焼酎には、出荷するのと同じレベルのかぼちゃを使用しました。焼酎造りに使うお米も栗東のお米を使っており、育てたかぼちゃが焼酎になった時はうれしく、他のお酒を飲んだ時とは少し違う気分でした。
 昔から上砥山の伝統行事はすべて農業と結びつき、農業は地域に身近なものでした。現在、営農組合の主要メンバーは20人で平均年齢は約68歳。後継者不足が大きな課題であるとともに、販売ルートの拡大が必要です。生産者はみんな頑張っていますので、栗東の皆さんは、農作物はぜひ地元のものを買っていただきたいです。かぼちゃ焼酎での関心が、市内の地産地消を進めるきっかけにつながれば」と語る、組合長の山元新一郎さん。
 かぼちゃ焼酎という加工品が、もとの農作物の素晴らしさを見直し、地産地消を考える契機になろうとしています。
ブランド農作物を作る
写真B良いお酒ができるように手作りの「杉玉」に願いを込める清流米の生産者、社納源太郎さん
写真C「獣害や草刈りが大変」と山口重三会長
栗東を代表する清流米が日本酒に
 純米酒「金勝」の原材料、こんぜ清流米。金勝地域でも山手の特に水の美しい棚田で育った産地限定のお米です。平成28年産の栽培面積は約4万u。環境と安全にこだわった農産物として、滋賀県の「環境こだわり農産物」の認証を取得しています。
 こんぜ清流米の生産者は現在15人。平成14年に「こんぜ清流米研究会」を設立し、毎年、感謝祭を開催するなど、消費者の意見を聴く機会を積極的に設け、普及拡大に努めています。
日本酒の製造で地域に夢が広がる
 こんぜ清流米の日本酒が販売されたのは、昨年6月から。清流米660sを使って製造された、720mlと一升瓶、合計1300本が完売しました。
 「獣害とも戦いながら、手間をかけておいしいお米を作っています。大変なのは草刈りで、毎月定期的に汗を流しています。使用している品種は、キヌヒカリで、加工すると甘みが出ます。育てたお米が違う形で商品化され、感慨深かったです。
 『こんぜ清流米研究会』の若手は40代。後継者不足の課題もあります。常に若い人の考えを取り入れるように努めていますが、今回の日本酒の製造で、若い人にも『こんぜ清流米でこんなこともできるよ』と前向きな事例提案ができます。それは後継者不足の課題解決にもつながってくるのではないでしょうか。昔、金勝地域にあった酒蔵で『金泉』という日本酒が造られていました。金勝の地名と水に由来するお酒です。これからは、純米酒『金勝』がこの地域の名前を残すことにつながれば」と語る会長の山口重三さん。
 純米酒「金勝」が地域に夢を広げています。
「栗東ブランド」を目指したお酒
 純米酒「金勝」とかぼちゃ焼酎「金勝」はともに「栗東ブランド」として、栗東のこだわり農作物の魅力をいかすため、農業者と商工業者が連携して事業展開しています。
 連携した取組みにより、栗東ならではのお酒が誕生し、新たな魅力発信につながっています。
 また、農作物は収穫・販売の時期が限られていますが、加工品にすることでより柔軟な販売ができます。
 このことから生産者の所得向上などが期待されています。
生産  
栗東くり太郎かぼちゃ生産者
こんぜ清流米生産者
 
加工  
太田酒造株式会社
   
流通・販売  
JA栗東市
※農業者と商工業者の連携で地域の活性化につなげる
ブランド酒を造る
江戸末期から続く伝統ある酒造り。
豊かな経験でブランド農作物が日本酒・焼酎に。
栗東の地域名がついたワインで魅力発信
 純米酒「金勝」、かぼちゃ焼酎「金勝」を製造したのは、太田酒造株式会社。草津市に創業明治7年の歴史と伝統ある酒蔵を所有し、江戸末期から続く酒造りの土壌を守り、継承していくと同時に、時代の流れに応じた新しい試みに挑戦しています。
 金勝地域にある浅柄野のぶどう園で収穫され、併設のワイナリーで製造された「浅柄野ワイン」は、栗東の地域名がついたおいしいワインとして栗東の魅力発信にもつながっています。
「不盡の名水」を日本酒と焼酎に
 「当社では、こんぜ清流米を使った純米酒を平成22年、『社団法人 栗東青年会議所創立35周年記念式典』の開催時に記念品として製造したことがありました。また、かぼちゃ焼酎も、15年ほど前に旧浅井郡の『栗えびす』で造った経験がありました。このことから、栗東の農作物でお酒を造るという話を引き受けさせていただきました。酒造りには水が重要な要素の一つですが、どちらも、浅柄野のワイナリーにある地下水を浄化・冷却したものを使用しています。この美しくて冷たい水は、『尽きることのない水』という意味で、私たちは『不盡の名水』と呼んでいます。この水を日本酒は、仕込水として、焼酎は、所定の度数に加水調整する際の水として使っています。
 純米酒『金勝』の精米歩合は70%で、アルコール度数は15度。焼酎『金勝』は単式蒸留焼酎で、アルコール度数は25度。いずれも、昨年の経験を踏まえ、よりおいしいお酒を造れるように頑張っています」と代表取締役の太田精一郎さん。
 古来から続く豊かな酒造りの経験により、栗東ブランドの農産物がおいしいお酒として生まれ変わっています。
ストーリーがあるお酒には夢がある。
 本来、日本酒を造る時に一般的には、酒造りに適した「酒造好適米」を使用します。純米酒「金勝」のキヌヒカリは食用の米ですので、味のふくらみが出にくい米。また、使用したワイナリーの仕込水も硬度が高く、発酵が早いため、淡麗になりやすいです。このため、今年は発酵を緩やかにする工夫をしました。
 杜氏になって20年以上ですが、貴重な体験につながりました。純米酒「金勝」もかぼちゃ焼酎「金勝」も、自社製品ではなく、依頼を受けた、大切なお酒。失敗できないというプレッシャーがありましたが、無事に出来上がり、ほっとしました。
 二つのお酒は、地元産のこだわりの材料を使っており、栗東ならではの物語があるお酒。世の中においしいお酒はたくさんありますが、ストーリーがあるお酒は特色が出せるとともに、夢があると感じます。

太田酒造株式会社
杜氏 梶塚 英夫さん
栗東ブランドを売る
栗東こだわり農作物の魅力をいかすことが
栗東の農業を守り育てることにつながる。
生産者の所得拡大を目指しアイデアで栗東を売る
 純米酒「金勝」、かぼちゃ焼酎「金勝」を企画・販売するのは、JA栗東市。今年も6月から純米酒「金勝」が「田舎の元気や」で展示・販売されています。かぼちゃ焼酎「金勝」も、夏に収穫されたかぼちゃを使って製造され、12月上旬には店頭に並ぶ予定です。
 「お酒の名前は、地域にこだわりの農作物があり、特性が出しやすい『金勝』に統一しました。
 JA栗東市が目指すべきものは何よりも生産者の所得拡大です。純米酒と焼酎造りに取り組んだのも、加工品を手がけることで生産者の所得を増やすためです。日本酒も焼酎も米を使うので、栗東産の米の需要拡大が期待できます。
 アイデアを出し合い、今年はギフトとして、純米酒『金勝』とお米をセットにして販売しています。お酒と合わせて、自慢の栗東米を知っていただくきっかけになればと考えています。
 かぼちゃ焼酎『金勝』は昨年よりも樽の中で熟成させ、かぼちゃ本来の甘みが出るようにしたいです。今年は、市内全体の生産者で取り組み、原材料を500sから800sに増やし、より多くのかぼちゃを消費拡大できるようにします。こだわりの農作物や2つのお酒で栗東をアピールしたい」と代表理事組合長の佐野宗二さんは話してくださいました。
酒かすを肥料に資源循環型農業に挑戦
 今年から、JA栗東市は、純米酒「金勝」の製造過程で出た搾りかすを次の米づくりの肥料や加工品に活用する資源循環型農業にも挑戦。より広がりが生まれています。
 二つのお酒に関わる多くの人と努力。生産・加工・販売と、それぞれのプロ意識の結集が栗東ブランドの農作物に新たな価値を加え、農業の可能性を広げています。
環境にやさしい資源循環型のお酒づくり
 日本酒の製造過程で出た酒かす140sのうち、120sを肥料として活用。
 20sはスコーンやパウンドケーキの材料になり、奈良漬けの製造にも取り組んでいます。
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