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全国的に進む農業の高齢化と後継者不足。市でも、農業を仕事にしている人が10年間で200人以上減っています。また、就農者の81.5%は60歳以上の高齢者です。
まちには強い信念をもって農業課題に挑む皆さんがいます。積極的な挑戦から、夢や可能性がふくらんでいます。
夢を乗せる「こんにゃくプロジェクト」
農業と福祉分野の連携で、農業に障がいのある人の力をいかす作業所「おもや」。さらなる地域連携により農業課題の解決を目指すプロジェクトが始まりました。
自然栽培こんにゃくを特産品に
平成23年、霊仙寺に誕生した障がい者支援施設「おもや」。「母屋」のあたたかなイメージから名付けられ、農薬も肥料も除草剤も一切使わない、「自然栽培」の野菜のおいしさが評判です。
ここでは、障がいのある人が就労し、手間を十分にかけた野菜を育て、農業の担い手になることで、後継者不足の解消につながるなど新しい可能性が広がっています。
「おもや」が新しくスタートさせたのが、「こんにゃくプロジェクト」。獣害や耕作放棄地が増える金勝地域に獣害が少ない品種であるこんにゃく芋を植え、加工し、特産品にしようという取組みです。獣害や耕作放棄地問題の解決や新しい特産品の開発につながることが期待されています。
5月18日、このための新しい加工場が開設しました。原料となる芋は、市内の農家にも協力を得て栽培。収穫後は加工場を中心に、一部は、こんにゃく製造業老舗の叶エ水商店(蜂屋)が加工・販売します。一連の過程を栗東で行い、栗東ならではの商品価値を付けて特産品化される予定です。
交流で長所をいかす農業
こんにゃく芋が育てられるのは、豊かな自然が広がる井上地域。2000uの畑に50p間隔で植えていきます。春に植えて秋に収穫し、風通しがよく、暖かい場所に保存。この作業を3年ほど繰り返し、収穫したものが原料になります。
「水やりや草刈りもします。自分たちが頑張って作った野菜を買ってもらえることがうれしいです。こんにゃくも多くの人に食べてもらえたら」と汗を流す、「おもや」に入って5年目の塚本湧也さん。農業を指導する西川真司さんは「地域との信頼関係を築き、障がいの有無に関わらず、人と人が交流し、互いの長所をいかすことでよりよいものができるように頑張っています」と話してくださいました。
共生のまちを目指して
5月29日を「こんにゃくの日」とし、この日、「おもや」では、特別企画を展開。カフェ「オモヤキッチン」でこの日のために用意したランチメニューの提供、大宝西学童保育所でこんにゃく芋の植え付けが企画されました。
「昨年収穫した150sを使い実際にこんにゃくを作りました。石灰を使わず、植物の灰からとれた灰汁を使って固めましたが、なかなか固まらず、試行錯誤の末、完成しました」と苦労を語る、「おもや」施設長の杉田健一さん。
「『おもや』の運営方針は、障がいのある仲間が農の担い手となり、生きる価値を生むことです。獣害や耕作放棄地が増える金勝地域の田畑は、視点を変えれば『ありがとう』のきっかけが多いところです。必要とされるところに向かい、『ありがとう』の言葉をもらい、少し自分のことが好きになれる、そんな仲間の自己実現を目指すことができたらと思います。プロジェクトでだれもが安心して楽しく暮らせる共生のまちを住民、行政、他団体とともに創ることができたら」と続けます。
農業と福祉分野の連携から、さらに市内での連携を進めて、農業による共生のまちの実現へ。こんにゃくをキーワードに、夢を載せたプロジェクトが始まっています。
「オモヤキッチン」で特別メニュー
「おもや」の畑でとれた自然栽培の野菜や果物を味わえるのが、畑の近くにある「オモヤキッチン」。平成27年3月にオープンし、調理補助や接客には障がいのある皆さんが携わり、社会経験を積む場としての役割も果たしています。
5月29日は、特別に「こんにゃくといわし梅煮」「こんにゃくの肉巻き」の2種類のランチメニューが登場しました。
肉巻きを食べた来店者の一人は、「こんにゃくがとてもやわらかく、食べたことのない食感でおいしいです。昔ながらの製法で作られていると聞き、おいしさに納得です」と笑顔で話してくださいました。
農業経営者に聞く〜きっかけ・現状・これから…〜
市内には500人を超える農業経営者がいます。農業への思いを代表して二人に聞きました。
社会問題となっている農業に挑むため、新規就農
藤田 真吾さん(38歳・上砥山)
徳島県出身で、平成21年、栗東市に移住して新規就農。現在、市内4地域をはじめ合計約2fの農地でほうれん草、水菜などの葉物野菜を中心にハウス栽培を展開。湖南地域の若手農家ら約20人が出資する野菜生産販売会社潟潟bチグリーン代表取締役。
中学の頃から空手を習っていて、25歳の時に人生の師ともいえる、沖縄空手の先生に巡り合いました。人間としての在り方を教わり、自分自身のことや日本のことを深く見つめるようになり、食糧自給率の低さや後継者不足など、常に社会問題となっている農業に挑戦しようと栗東に移住しました。
知り合いのいないまちで新規に農業をするため、自転車であちこちを走り回り、たんぼや畑で仕事をしている人を見つけては、農業を教えてもらえないか尋ねました。こうした結果、よき出会いがあり、「給料はいらないから農業を教えてください」と頼み込んで研修をさせてもらいました。農地も農業を教えてくださった先輩のおかげで借りることができました。
現在、農業を始めて9年目になります。有機肥料100%の葉物野菜を作り、20人の同志で立ち上げた潟潟bチグリーンに所属しています。組織では、情報も意見もたくさん入ってきます。お客さんの需要に応えられるよう頑張っています。自分の中には空手が入り込んでいて、農業に携わることで、体内の細胞がいきいきと活性化しているように感じています。
最近、アメリカの農場を訪問しました。感じたことはコミュニケーションの大切さです。知らない人に積極的に話しかけることで、知りたかった農業の情報などにつながりました。農業を始める時、支えてくれる人と出会ったように、まずは話しかけることで道が開けてくることが多くあります。
また、アメリカで、CSA(Community Supported Agriculture )ボックスを知りました。地元の農家を応援しながら、季節を通じて異なる種類の有機野菜が詰め合わされた箱を受け取る仕組みです。栗東でもぜひ実現できたらと夢がふくらんでいます。
地域に根ざしながら、チャレンジする農業
竹村 明さん(59歳・東坂)
サラリーマンから転職し、平成6年に就農。12棟のハウスで35種類の花や野菜の苗を中心に栽培。夫婦で農業に携わり、妻の美智代さんは、イチゴ栽培を担当。地域の朝市にも長年関わる。栗東市農業振興会長、農地利用最適化推進委員。
会社員の時、農業関連の仕事をしており、農業に携わるいきいきとした人を見て、自分も夢を追いたいと就農しました。
親から譲り受けた農地に12棟のビニールハウスを建て、花苗の栽培を始めました。湖南地域に花苗の栽培をしている人がおらず、チャンスだと思ったからです。
お客さんに楽しんでいただこうと毎年、ハウス内で、門松づくり、ミニコンサートなどを企画しています。イチゴ狩りをしていた時には、子ども達も楽しめるように、産地などを紹介した紙芝居も手作りしていました。
担い手不足が課題になっていますが、新しく農業を始めたい人の中には、農地がない人もいます。各機関が連携し、農業を仕事にしたい人が農地を借りて実践できるレンタルトレーニングハウスのようなもので担い手の支援ができたらと思います。
農業は個人では限界があり、地域力の重要性を実感しています。受け取った農業のバトンを次世代に受け継ぐのは、住民の責任です。そのため、頑張る自分の背中を見せることも大切にしています。
東坂地域では8年ほど前から農家の若者を集め、農業の研修会をしています。案外、両親以外の人の言葉は素直に聞いてくれるものです。自主的に田植えや稲刈りをしてくれるようになり、つながりも深まっています。獣害対策の柵も農家でない人も一緒に建てました。地域の農業への理解が深まったように感じます。
地元で農業に携わり、家族で楽しくいろんなことに挑戦してきました。数年前にガンを宣告され、死を考えた経験がさらなるエネルギーになっています。栗東には道の駅などの直売所があります。都市部から来た人にも栗東のおいしい農作物を買ってもらうことができ、夢や可能性が広がります。せっかくこの世に受けた命。今後もチャレンジし続けていきたいです。
農業従事者の約80%が60歳以上の高齢者
■高齢化が進む市の農業
全国的に人口が減少すると推測されていますが、本市は今後も一定の人口増加が見込まれる地域です。しかしながら、農業は、全国同様に高齢化と農業人口の減少が進んでいます。
市内販売農家(経営面積30アール以上または農産物販売額が50万円以上)のうち約8割が60歳以上となっており、この10年で244人も減少しています。
農業従事者の高齢化や担い手不足などの課題解決のため、市では、交付金の活用や担い手への農地集積、集落営農法人化支援などで農業を支援しています。
農業に関する相談・問合せは農林課へ。
問合せ
…農林課 農政係 TEL.551-0124 FAX.551-0148
応援しよう!安全・安心で顔の見える栗東産農作物
道の駅アグリの郷栗東に通う
森国 幹子さん
平成12年に道の駅アグリの郷栗東がオープンして以来、通い続けています。栗東産の新鮮な野菜や果物には生産者の名前が書かれていて、作った人の顔が見えます。そのおいしさから、ブロッコリーはこの人、いちじくはこの人とファンになり、今は名前を見て購入しています。
実際、生産者に畑や農地を見せていただいたこともあります。ここで作られていると思うと、安心につながります。見た目だけでなく、作り手の顔や生産地を思うとおいしさが増します。生産者からおすすめの食べ方を教えていただくこともあります。
安全・安心でおいしい栗東産の農作物。私たちが積極的に購入することで農業を応援できます。レストランを開く息子の友達や神戸の友人など、他県の人にも自信をもっておすすめしています。
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