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人生の最期まで自分らしく
 人は、いつか、どこかで、必ず人生の旅立ちを迎えます。その日をどのように迎えたいかを考えておくことは、人生をどう生きるかにつながります。  住み慣れた自宅で最期まで療養したいと思う人は約50%。在宅療養をかなえることができる環境が、まちにはあります。
生き方を見つめる「生き方カフェ」
 7月27日、小柿にある老人福祉センター「ゆうあいの家」で、大切な人や自分の最期を考え、生き方を見つめる集い「生き方カフェ」が開かれました。このカフェは、栗東市介護者の会と市の共催で年5回開催されています。市民と医療・福祉の専門職がともに語り合える場です。
 介護が終わった後に、「本当にこれでよかったのだろうか」「本人はこれを望んでいたのだろうか」という思いが残る人が多い現代。介護者の会の当時の会長が「まだまだ病院で最期を迎える人が多いが、今の医療や福祉のことを知り、自分で選択でき、自分らしい人生を送ることができるようにしたい」と熱い思いで、開催を市の地域包括支援センターに働きかけました。こうして、平成25年、在宅療養看取り啓発事業で滋賀県初となる市民と市との共催事業「生き方カフェ」が始まりました。
 当初から、「市民目線の集い」を大切にして活動。より多くの人の参加を目指し、平成27年にはシンポジウムと写真展、平成28〜29年には「さぁ来い!老後フォーラム」を開催し、計1000人以上が自身や家族の生き方を考えました。
 本年度から、より身近な話題で話し合えるように、各中学校区の地域包括支援センターとともに開催しています。
 25回目となる今回は、「楽しもう!見つけよう!身近な居場所と生きがい!」をテーマに開かれ、栗東西中学校区で活動する皆さんが話題提供。参加者39人がグループに分かれて議論を深めました。
介護は大変だが得られることも多い
 「生き方カフェ」を共催する栗東市介護者の会が設立されたのは、平成6年。「介護者が互いの悩みや思いを語り合う場をつくろう」と栗東市社会福祉協議会が事務局となり発足しました。市内在住・在勤の人なら誰でも入会でき、現在のメンバーは、55人です。
 「会員の状況も時代とともに変化してきました。今は家庭によっていろいろな介護の形があり、多様化してきています。介護者の環境も、老老介護、子育てと介護のダブルケアなどさまざまで、介護の形も変わってきています。時代に沿った会の在り方が必要です」と語る会長の渡部弘美さん。
 「介護を終えた後、会員一人ひとりが自分らしく過ごされることを願っています。また、『生き方カフェ』で介護者の会のことも市民の皆さんに知ってもらい、介護は大変なこともたくさんありますが、得られることも多いということを会員の体験談から知っていただけたらうれしいです」と続けます。
 皆さんも「生き方カフェ」で、自分や大切な人の最期を考え、ともに語り合う機会を持ちませんか。
「生き方カフェ」参加者の「声」
にこにこカフェ・大宝の郷の活動発表から考えました。
他にも、「ゆうあいの家」「はるにし子どもカレー食堂」
「北浦サロン会」の事例発表から生き方を見つめました。
義理の父を看取ってからも介護者の会にOBとして参加しています。介護経験を伝えるとともに、逆に皆さんに自分らしい生き方を教えてもらっています。
母を20年介護し、看取った後、夫の介護をしています。同じ悩みを持つ仲間が集う介護者の会では、なかなか分かってもらえない介護の悩みを打ち明けることができ、心が軽くなります。このカフェはさまざまな皆さんの考えにふれることができる貴重な機会です。
話題提供から多くの話を聞き、勉強になりました。自分らしい人生を考え、実践していきたいです。
母を在宅で介護した経験もあり、介護者の会に夫婦で参加しています。自宅で母をみることができてよかったと思います。亡くなる前に母から感謝の言葉をもらいました。
積極的な生き方を感じるとともに、人とつながることの大切さを知りました。
第26回 生き方カフェ「口から健康を考えよう!」
 口の健康は身体の健康につながっています。毎日の生活の中でできること、これからの自分のためにできることを一緒に見つけましょう!
・日時…9月27日(木) 13:30〜15:30
・場所…栗東市危機管理センター 3階 大研修室
・対象…市内在住・在勤の人
・定員…40人(要申込み)

・講師…草津栗東守山野洲歯科医師会の皆さん
 高森泰彦さん(高森歯科院長)
 星合幹也さん(みきや歯科院長)田中重文さん(田中歯科医院院長)中村あさ子さん(歯科衛生士)
 福本敦子さん(歯科衛生士)

問地域包括支援センター  TEL.551-0285
在宅療養を望む人が約50% 連携を進めています
 平成28年の「介護予防・日常生活圏域ニーズ調査」では、自宅で療養生活を送りたいと答えた人は約50%にのぼります。しかし、自宅で最期まで療養できると思う人は約14%で、理由は、家族への負担や症状が悪くなった時の不安などです(下図)。また、実際にほとんどの人が病院で最期を迎えています。
 市では、調査をもとに平成30年3月、「第7期高齢者福祉計画・介護保険事業計画」を策定。「住みなれたところで大切な人に囲まれて安心して療養したい」という希望をかなえるために、行政や関係機関が連携して、よりよい在宅療養を進めるために取り組んでいます。
■自宅で最期まで療養できないと思う理由 要支援者 要介護認定非該当者
介護してくれる家族に負担がかかる 58.5% 79.3%
症状が悪くなった時の対応に自分も家族も不安 47.7% 49.0%
症状が悪くなった時に、すぐに入院できるか不安 44.6% 37.3%
経済的に負担が大きい 40.0% 28.0%
介護してくれる家族がいない 41.5% 19.8%
往診してくれるかかりつけの医師がいない 21.5% 21.9%
訪問看護体制(看護師の訪問)が整っていない 24.6% 11.9%
居住環境が整っていない 12.3% 14.0%
24時間相談にのってくれるところがない 18.5% 13.1%
訪問介護(ホームヘルパーの訪問)体制が整っていない 16.9% 11.7%
その他 4.6% 2.1%

専門職の連携で在宅療養を支える
 「大切な人とともに、住みなれた自宅で最期を過ごしたい」という、夫・久男さんの願いをかなえたかった植本綾乃さん。相談を受けた専門職が連携して、久男さんが自宅で自分らしい最期を過ごすことを支えました。
共通理解を深める合同協議
 心臓の病気があり、治療を続けていた、植本久男さん。平成28年8月、痩せ方が激しく、病院を受診した結果、末期の肺がんが分かり、抗がん剤治療を受けていました。平成29年5月、腰痛が起こり、入院生活が始まりました。
 「自宅で最期を過ごしたい」。久男さんの思いをかなえるため、7月の退院日に本人、家族、訪問看護ステーションの看護師、ケアマネジャー、地域包括支援センター職員が集い、合同協議が行われました。集まった皆さんは、在宅療養を支えていくため、医師より病状説明の後、緩和ケアチームや理学療法士などから状況や注意点などの説明を受けました。
 「退院前の土・日に自宅に帰る外泊で様子をみましたが、本人の状態が安定しているのが分かりました。合同協議では、退院してこれからどのようなことに気をつけなければいけないのか、薬の飲み方などを教えていただきました。自宅には、トイレやお風呂に手すり、シャワー椅子、足台などを設置していただきました」と、久男さんが自宅で最期を過ごすための準備を整えた綾乃さん。
 「夫はお風呂が大好きで、こうして、毎日お風呂に入ることができました。寝るときも、和室に置いたベッドの横で、息子夫婦と孫と私とが毎日一緒に寝ました。好きなものを食べ、みんなと語らい、大好きだった車で外出もしました。最後の入院となる5日前、夫が生まれる3か月前にフィリピンに出征し、亡くなった父(23歳)の遺影を彦根にある神社に自ら安置しに行きました。家族で行ったのですが、父子の最初で最後のふれあいだったのかなと心に残ります。本人は余命を希望のままに自宅で過ごすことができました」と話します。
 在宅療養の約1か月後、久男さんは症状が悪化し、再入院の1週間後に亡くなりましたが、家族に見守られ、穏やかな最期でした。
連携して生活をサポート
 「在宅療養時は、自宅から近い地域のかかりつけの先生に診てもらっていました。必要時にすぐに対応してくださり、酸素マスクの手配の早さにも驚きました。訪問看護ステーションの看護師さんが夜中に薬のことを聞いても答えてくださったのも心強かったです。24時間体制で、ちょっとしたことも気軽に聞くことができます。地域包括支援センターの職員さんとの出会いも大きかったです。何も分からなかった私に親身に相談に乗ってくださり、関係機関へとつないでくださいました。また、介護保険の範囲で福祉用具を備え付けることができました。
 突然末期がんを宣告され、怖くてどうしたらよいか分かりませんでしたが、皆さんのおかげで、夫も自宅で家族とともに穏やかに過ごすことができました。よい最期だったと思い、とても感謝しています」と続ける綾乃さん。
 多職種が連携し、在宅療養生活を送る本人や家族を支えています。
身近なかかりつけ医を持ちましょう
 在宅療養をかなえるためにはどのようなことが必要になってくるのでしょうか。医療機関の立場から、一般社団法人 草津栗東医師会 副会長に聞きました。

一般社団法人 草津栗東医師会
副会長 新木真一さん
■在宅療養で、かかりつけ医の大切さが言われています
 「かかりつけ医」とは、健康に関することを何でも相談できる、身近にいて頼りになる医師のことです。高齢になると、自由に動けなくなったり、車に乗れなくなり、交通手段がなくなる可能性があります。かかりつけ医である医院や診療所が自宅から徒歩やバス1本で行けるような近い場所にあれば、自分で通院できます。気軽に行くことができるため、「家族に迷惑をかけたくない」という患者さんの心理的な負担軽減にもなります。

■病院もありますが…
 在宅医療の良さは、住み慣れた家で通常の生活をしながら療養できることにあります。その人の生活環境や介護状況などにあわせた医療を行うことができます。家族も自宅で介護することが可能です。
 普段診てもらっている近くのかかりつけ医の先生だからこそ、小さな体調の変化にも気付いてもらうことができます。必要な時は専門的な治療ができる病院を紹介してくれます。
 体調、生活習慣、病歴などを把握し、関係が築かれているため、かかりつけ医は定期的な訪問診療も可能ですが、病院で訪問診療をしてもらうことは難しいです。

■医療機関の連携はできているのでしょうか?
 連携はできていますので安心してください。病院にかかる時、「症状が悪くなった時、初めて診てもらうのは不安」と感じている皆さんも多いと思いますが、地域の医療機関と病院は、患者さんの情報を共有しています。
 その一つに滋賀県全域を対象とした「びわ湖あさがおネット※」があります。本人の同意のもとで、診察情報や在宅療養支援情報を関係機関で安全に共有できる仕組みです。医療機関同士だけでなく、地域包括支援センター、訪問看護ステーション、調剤薬局などの機関とも情報共有しています。
 まずは、普段のかかりつけ医を受診しましょう。

■在宅医療をかなえるためには
 在宅医療には訪問看護が重要な役割を果たします。市内には5か所の訪問看護ステーションがあり、緊急時には365日24時間の対応が可能で、在宅医療を支える頼もしい存在です。
 身近に信頼できるかかりつけ医を持ち、家族間の信頼関係と共通理解を深めておきましょう。

※びわ湖あさがおネット https://www.biwako-asagao.net/
在宅療養の相談は地域包括支援センターへ
 市では、地域包括支援センターが中心となり、多職種の連携により、在宅での医療・介護サービスを安定して提供する体制を充実させています。
 在宅医、歯科医、薬剤師、ケアマネジャー、訪問看護師、リハビリ専門職、介護福祉士、ホームヘルパー、歯科衛生士、栄養士など、多くの専門職が互いに情報共有しながら、在宅療養を支えています。
 在宅医療・介護連携支援相談員(コーディネーター)を配置し、医療や介護情報を提供するとともに、専門職の資質の向上に取り組んでいます。
 在宅療養に関する悩みや相談は気軽に地域包括支援センターへ。

■栗東市地域包括支援センター
 (担当学区:治田・治田東・治田西・金勝・大宝・大宝東・大宝西)
TEL.551-0285  FAX.551-0548
■葉山地域包括支援センター
 (担当学区:葉山・葉山東)
TEL.552-5280  FAX.551-2323
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