今回は、栗東歴史民俗博物館で平成30年度に新たに収蔵した陶磁器コレクションを紹介します。
この陶磁器コレクションは、明治期から昭和20年代ごろまでのもので、主に戦争や軍隊をテーマにした図柄が描かれた皿や茶碗、湯飲みなどの日用雑器を主体に、軍人型の貯金箱や人形、代用品などから構成されています。
なかでも目を引くのは、美しいイラストや意匠が施された皿のコレクションです。皿は14枚あり、大別すると表面にイラストが描かれた絵皿と、パターン化した意匠を単色で表面に表した皿の2種類に分かれます。
絵皿は、戦争を想起させる絵柄が書き込まれているものが多く、騎馬将校が戦う背景に日清戦争の戦場が描かれたものや、日露戦争の際に戦場となった奉天を遠望する騎馬将校を描いたものなどがあります。単色のものには日章旗や旭日旗、日本陸軍を象徴する桜花などの軍隊を想起させる紋様がプリントされています。とかく、現代においても皿などの日用雑器には、その時代の空気感が反映されます。例えば、昭和時代末期のバブル時代は、高級ブランドのライセンス商品が好まれました。
今回紹介した陶磁器コレクションの日用雑器が作られた時代、日本では日清戦争や日露戦争、第一次世界大戦、そして日中戦争から太平洋戦争まで、度重なる戦争を経験した時代にあたります。皿に描かれた戦争や軍隊のイメージはこうした時代の空気感を反映したものなのです。特に日清戦争、日露戦争と勝ち戦が続いた時代のものは、高揚する国民の気持ちが如実に絵柄に反映されています。また、こうして絵柄となって視覚化されたことで、当時の政府が推し進めた軍国主義化への賛同を広める効果もあったでしょう。
敗戦によって太平洋戦争後は戦争のない平和な時代が求められるようになり、このような直接的な戦争や軍隊を想起させる意匠の陶磁器は姿を消しました。
※今回紹介した絵皿を含む陶磁器コレクションは、7月27日(土)〜9月1日(日)まで、栗東歴史民俗博物館で開催する「平和のいしずえ 2019」にて紹介します。ぜひご覧ください。 |