栗東歴史民俗博物館では、本市の「心をつなぐふるさと栗東・平和都市宣言」を受け、平成2年度から、戦争と平和をテーマとした「平和のいしずえ」展を開催しています。
展示を構成する資料の多くは、展示の趣旨に賛同あるいは期待してくださる栗東地域の人たちから提供されたものです。
今回はその中から、日中戦争前後から太平洋戦争の終盤にかけ全国的に流行した「出征幟」を紹介します。
「幟」は「幟旗」の略で、縦長の旗のことです。古くは戦の際に、敵味方を区別したり、陣地の目印に使われたものですが、ここで紹介する「出征幟」は戦場へ赴く若者たちへのはなむけとして、家族や知人・職場や地域の人びとが贈ったものです。
明治時代から昭和20年の敗戦まで日本には徴兵制がしかれ、成人男性には兵役義務が課せられていました。兵役につくため入隊すれば、決められた期間(通常は2年程度)は家族や仕事を離れることになりますし、もちろん戦場で負傷したり命を落とす危険もありますから、本人にとっても家族や周囲の人びとにとっても兵役は大きな負担でした。しかし、兵役は当時の憲法でも定められた「国民の義務」だったため拒否することは難しく、社会的にはむしろ喜ばしく名誉なこととして扱われていました。若者の入隊のために用意された出征幟が明るく晴れやかな雰囲気に満ちているのはそのためです。
出征幟は、入隊が決まった若者の家の周囲に立てられ、どこの誰が入隊するか地域の人びとに情報を伝える一種のメディアとして機能しました。また、神社などで行われた戦勝祈願のセレモニーや駅まで若者を見送るパレードでも、打ち振られる「日の丸」の小旗とともに欠かせない小道具となりました。
多くの若者の入隊を「名誉の門出」として演出した出征幟ですが、太平洋戦争末期の戦況悪化の中で、情報漏洩を防ぐため入隊セレモニーが禁止されたことなどから、敗戦より一足先にその役割を終えていきました。
現在、栗東歴史民俗博物館には20点の出征幟が収蔵されており、「平和のいしずえ」展でも順次これらの幟を紹介していきます。戦場に散った若者たちと、彼らを送り出した地域の人びと双方の思いを今に伝える出征幟をご覧いただき、戦争と平和について考える機会としていただきたいと願っています。
■特集展示「平和のいしずえ2021〜戦時下のくらし〜」
会期…7月17日(土)〜9月5日(日)まで
※詳細はこちらをご覧ください。 |
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問合せ
栗東歴史民俗博物館 TEL.554-2733 FAX.554-2755 |
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