トップページ(目次)へ
りっとう再発見 栗東に残る日清戦争
 里内文庫は明治43年(1910)に手原に設立された図書館です。作ったのは、手原の里内勝治郎で、個人が設立した私設の図書館でした。
 明治10年(1877)生まれの勝治郎は文庫創設に至るまで、小学校から高等小学校に進み、その後、英語や漢文の個別指導を受けたり、東京専門学校(のちの早稲田大学)の通信教育を受けるなど、自身の好奇心を満たすためにどん欲に学ぶ青少年時代を過ごしています。明治時代の地方でこのように存分に教育を受けられるのは、地域のなかでも勝治郎のように恵まれた環境にあった一部の人たちに限られていました。このことを理解していた勝治郎には、文庫の活動を通して、彼自身が獲得し得た知識や技術を地域の人たちへ還元していこうとする姿が見られます。
 例えば、地域の子どもたちに対しては、葉山小学校内に一室を借りて、児童文庫を設け、どんな子どもにも図書に触れる機会ができるようにしました。また学校を卒業し、学習の機会から遠ざかっている大人たちに対しては、さまざまな講演会や実践的な講習会を行いました。こうした活動は、国連が定める17の持続可能な開発目標(SDGs)のうち「4 質の高い教育をみんなに」に通じています。
 ほかにも農業の改良や、荒れ果てた山への植林事業など、里内文庫では地域を豊かにするため、図書の閲覧など本来的な図書館活動とは一線を画す活動を行っていました。こうした活動はSDGsの「9 産業と技術革新の基盤を作ろう」や「15 陸の豊かさも守ろう」に通じます。明治時代の図書館、里内文庫はSDGsを先取りしていた側面があるのです。
 歴史民俗博物館で開催中の特集展示「里内文庫の教育教材」では、このような里内文庫の活動の中で用いられたさまざまな教育教材を通して、里内文庫や勝治郎の取組みについて紹介しています。
 期間中は、里内文庫の活動にならい、子どもたちを対象にしたワークショップ「動け!My ロボット★プログラミング体験ワークショップ」を開催します。ロボットカーを組み立て、プログラミングソフトを用いて思い通りに動かす体験です。先進的な知識技術が大好きだった勝治郎が生きていたなら、きっと文庫の事業にしていたことでしょう。

※里内文庫の活動は成人対象の事業がほとんど男性に限定されているなど時代の制約によりSDGsにそぐわない部分もあります

※展覧会・ワークショップの詳細はこちらをご覧ください
問合せ
栗東歴史民俗博物館 TEL.554-2733 FAX.554-2755
トップページ(目次)へ
次のページへ