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平成2年9月に開館して、令和7年の今年で35周年となる栗東歴史民俗博物館(以降、博物館)では、地域の歴史や文化に関するさまざまなテーマの展覧会を開催してきました。その中で、35年間継続して開催しているシリーズがあります。戦争と平和をテーマとした「平和のいしずえ展」です。
博物館の「平和のいしずえ展」は、昭和63年(1988)に栗東町が行った「心をつなぐふるさと栗東」平和都市宣言を受け、町役場の複数の部署が参加・実施した「平和のいしずえ」事業の一つとして、平成3年(1991)8月に初めて取り組まれました。記録では「平和のいしずえ展」は展覧会の名称ではなく、博物館と栗東町立図書館が実施した平和に関する映画会や講演会、展覧会などのイベント全体の呼称で、博物館で開催された展覧会の表題は「戦時下のくらし」でした。この展覧会は博物館で13日間開催されました。 |
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展示風景(2019年) |
再現した戦時食「農村栄養パン」(2011年) |
展示風景(2021年) |
展示風景(2021年) |
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これに先立ち『広報りっとう』で「あの体験を語りつたえたい…『平和のいしずえ展』、体験作文・展示資料を募集」という見出しの記事で戦時中の町の写真や生活資料、体験作文の提供を呼びかけ、集まった資料を中心に展示を構成しました。この時に募集した戦時中の体験作文は、冊子『戦時中の体験作文集~あの体験を、語りつたえたい~』にまとめられ、「平和のいしずえ展」開催期間中、博物館や栗東町立図書館への来場者に配布されました。
これらの企画は好評を博し、翌平成4年(1992)の「平和のいしずえ」事業は、歴史民俗博物館・町立図書館に加えて町内の各公民館(現コミュニティセンター)も子ども向け映画会や平和を描く子ども絵画教室、大阪国際平和センター見学会などを企画、規模が大きくなりました。博物館でも、この2回目の参加から展覧会の名称を「平和のいしずえ展」と改め、展示室での開催とし、展示パンフレットも作成するなど、展覧会としての形を整えています。これをきっかけに家族の遺品や戦争資料を博物館に寄贈・寄託したいという所蔵者の申し出が増え、博物館として本格的に戦争・平和資料の収集に取り組むようにもなりました。 |
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戦争遺跡の見学会
(豊川海軍工廠)
(2005年) |
戦争遺跡調査
(金勝山中松脂採取樹の調査、栗東中学校生徒とともに)
(2016年) |
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その後も夏季の定番事業として展示を充実させるとともに、戦争遺跡の見学会や戦時食体験などの記念企画を開催するなど工夫と試みを繰り返しながら、博物館でも最長のシリーズ展示となりました。
アジア・太平洋戦争が終結して今年で80年。日本や世界の状況は刻々と変化し、「平和」をめぐる人びとの意識も多様化が進んでいます。博物館では、未曽有の苦難の時代を生きた地域の先人たちの思いを現代につなげる機会として「平和のいしずえ展」をこれからも市民の皆さんと共に育てていきたいと願っています。 |
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栗東町・栗東町教育委員会編
『戦時中の体験作文集~あの体験を、語りつたえたい』(1991年) |
平成3年度「平和のいしずえ展」
宣伝チラシとリーフレット(1991年) |
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平成4年度「平和のいしずえ」
宣伝チラシとパンフレット(1992年) |
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「心をつなぐふるさと栗東」平和都市宣言
世界の恒久平和は、人類共通の願いである。わたくしたちは、「心をつなぐふるさと栗東」の豊かな自然と歴史・文化遺産にはぐくまれ、日々平和な生活を享受している。
この平和を恒久のものとするため、世界唯一の核被爆国の国民として、全世界の人々に被爆の恐ろしさ、苦しみを訴え、再びその惨禍を繰り返してはならない。
栗東市は、人類の恒久平和を実現するため、我が国の基本方針である非核3原則を堅持し、核兵器廃絶を目指し、核戦争防止を強く訴え、ここに「心をつなぐふるさと栗東」平和都市を宣言する。
(昭和63年3月10日議会において全員一致で可決) |
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「平和のいしずえ2025・戦争と地域の暮らし」
会期 8月31日㈰まで
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