地方に花咲く黄檗の華
5月29日(栗東市民俗博物館)
栗東歴史民俗博物館では、黄檗宗の宗祖、隠元禅師の350年遠諱にあたり、『黄檗の華』を開催しています。
関連企画として、歴史文化講座「地方に花咲く黄檗の華」を開催しました。
館長の、「この講座が、市内地域が育んできた歴史を見直すきっかけになるように」との言葉から、講座が始まりました。


前半の講座は、直木賞作家の澤田瞳子さんが登壇されました。
東近江市「観峰館」の寺前公基さん、栗東歴史民俗博物館の学芸員の視点も交えて、意見が交わされます。


澤田さんからは、小説の題材として隠元禅師を取り上げた理由を伺い、隠元を取り巻く登場人物の魅力について、寺前さんと話されました。
史実を物語として構成していくために、人物や土地の歴史、時代背景、組織やその階級を調べながら想像を巡らせるという澤田さん。次々と出るお話から、豊かな見識や着眼点の鋭さを伺い知ることができました。
講座の後半は、栗東歴史民俗博物館 元館長の佐々木進さんが登壇され、
学芸員として平成4年に隠元禅師・生誕400年記念展「近江と黄檗宗の美術」を担当された当時の秘話や、これまでの黄檗美術の調査・研究について伺いました。


黄檗美術とは、黄檗宗とともに中国から渡ってきたもので、その後日本でも、宋の表現や技法を倣うことで、隠元の孫弟子の代にその美術様式が大きく開花していったそうです。
前回は30年前の展覧会でしたが、それからさまざまな調査が進みました。
スクリーンの画像で、黄檗美術の優れた表現技法を丁寧に解説され、
参加者は、隠元禅師や黄檗文化・美術の魅力に、真剣な表情で聞き入っていました。


展示からも、仏像彫刻などの着衣のひだや装飾、版画や水墨画・書などで、黄檗美術の特徴や質の高さを確認することができます。
最後に、澤田さんから「滋賀県の歴史は、古代から近代まで途切れることなく、さまざまな流れがあることがわかっており、それは全国的に見ても珍しい事。滋賀というと戦国時代ばかりが注目されるが、連綿と続いてきた歴史や文化に細やかに目を向ける事で、よりたくさんの価値を見いだすことができる」と話され、講座が終わりました。

栗東歴史民俗博物館で開催中の「隠元禅師350年大遠諱記念展『黄檗の華』」は7月3日まで開催しています。
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更新日:2022年06月06日