2001〜2004年度栗東市発掘調査成果展
むらのうつりかわり −栗太郡の中世集落を中心に−

平成17年(2005)11月19日(土)〜12月18日(日)



 2001年度から2004年度にかけて行われた栗東市内の発掘調査の成果を紹介します。
 またこれらの中には、中世における栗東の集落にかかわる重要な資料がいくつか含まれていたことから、全体を2部構成とし、第1部では縄文時代から平安時代までの遺物を、第2部では栗東を中心とする旧栗太郡の中世の集落に関わる資料を特集いたします。

第1部 2001〜2004年度栗東市発掘調査成果展 〜縄文時代から平安時代へ〜
 2001〜2004年度の発掘調査の結果から、新しく知られるようになった栗東の各時代の有様を紹介いたします。

縄文時代
 狐塚遺跡:これまでの調査で縄文中期から後期にかけての住居跡や石器・土器などが発見されていますが、今回の調査では、縄文時代後期の土器や石器が大量に出土しました。市内でははじめての出土となる土偶や、多様な石鏃、サヌカイトの原石などがみつかっています。
(弥生時代)
 下鈎遺跡:過去の調査では、弥生時代中期の溝から出土した日本最小の銅鐸や、弥生時代後期の大型掘立柱建物などが見つかり、全国的にも注目を集めてきました。今回の調査でも、銅鏃や銅鐸の鋳型かとみられる土製鋳型、鋳造の過程でできたと見られる残滓など、銅製品生産にともなう特殊な遺物が発掘されました。
 下鈎東遺跡:堤を伴う大溝が発掘され、木製の盾など貴重な品が出土しました。
 十里遺跡:当時の墓制を考える手掛かりとなる壺などが発掘されました。
         ←十里遺跡出土の弥生土器
 小柿遺跡:栗東を代表する弥生時代の集落遺跡です。
(古墳時代)
 辻遺跡:碧玉などの玉造りに関わる資料が出土しています。
 高野遺跡
:古墳時代前期の竪穴式住居などが出土しました。
 新開西古墳群・安養寺遺跡:新開西古墳群は2002年に発見された栗東の終末期古墳を代表する古墳群で、有蓋長胴棺などが出土しています。安養寺遺跡は新開西古墳群に隣接し、銅鏡や鉄剣が出土しています。
飛鳥時代)
 霊仙寺遺跡:無文銀銭や軒丸瓦などが出土しました。無文銀銭は富本銭などの銅銭にさかのぼる最古の貨幣で、市内からは2例目の出土になります。当地付近には「栗田・栗元」などの小字が残されており、北方600mほどのところには官衙的性格を指摘される十里遺跡もあるなどから、伝承等にのこる郡名寺院「栗太寺」との関連も指摘されています。
 辻・高野遺跡:2004年度の発掘調査で、幅約8m深さ約1mの川跡から、飛鳥〜奈良時代の土器が大量に出土しました。多くは食器や煮炊き具として一般的に使われていた須恵器・土師器ですが、中には大型の須恵器の供膳具や、他地域から搬入された遺物も含まれ、役人が使用する革ベルトの飾り金具といった特殊な遺物もみつかり、役所に関わる人物もいたと考えられます。
(奈良〜平安時代)
 岡遺跡:古代の栗太郡衙跡として知られてきましたが、周辺の発掘調査により関連施設と思われる遺構が出土しています。また役人が身に着けたとみられるベルト飾り金具なども出土しています。

【特別公開】・・・2005年の発掘成果のなかから、重要なものを速報で紹介いたします。
下鈎遺跡
古代中国の前漢(紀元前202年〜後8年)でつくられたとみられる前漢鏡の破片、子持勾玉などが出土しました。
前漢鏡は、中国戦国時代の書物「楚辞」を引用した文字を刻んだ「異体字銘帯鏡」で、北九州を中心に出土が知られるものです。今回は滋賀県内でははじめて、また類例中最も東での出土地点となりました。当時入手の難しかったであろう貴重な中国の鏡をもっていたことからは、当時のこのあたりの首長が大きな力を持っていたことがうかがえます。
子持勾玉は、大型の勾玉のまわりにいくつもの小型の勾玉形の飾りをつけたもので、古墳時代中期(5世紀後半)の土壙から発掘されました。須恵器、臼玉、有孔円盤などとともに出土しており、祭祀の場であったとみられます。
←子持勾玉(下鈎遺跡)

第2部 むらのうつりかわり 〜栗太郡の中世集落を中心に〜
 土地の区画制度に関わる条里遺構がみつかった下鈎東遺跡、平安時代の屋敷地がみつかった伊勢遺跡、それらの屋敷地がしだいに集まり集村化した鎌倉時代の狐塚遺跡、集村化ののち室町時代に周辺を大規模な濠で巡らせた綣遺跡などを中心に中世集落の変遷過程に注目し、周辺地域での発掘成果とあわせて考察していきます。
 特に綣遺跡では、中世前期の環濠屋敷群から中世後期の集村化へ、さらに現在の集落へと変遷する過程がうかがえます。また綣の大宝神社の文書には、時期的には集村化後のものとして祭礼関係を含めた文書群が残されており、村の人びとのあいだにも変化が見られるようになります。集村化のもたらした影響を文書資料からも探ってみます。

とりあげる主な遺跡と資料・・・
(栗東市)
綣遺跡
(瀬戸系施釉陶器、墨書黒色土器など)、下鈎遺跡(木製包丁・漆器椀など)、林遺跡(羽釜など)、下鈎東遺跡、伊勢遺跡、中村遺跡(白磁碗など)、狐塚遺跡(瀬戸系施釉陶器、軒瓦など)、上鈎遺跡
大宝神社文書
(草津市)
野路岡田遺跡(讃岐系軒丸瓦、瓦器椀、刀子など)
(野洲市)
大篠原東遺跡(施釉香炉、黒色土器など)、西田井遺跡、北桜南・北桜東遺跡(羽釜など)、小堤遺跡、三堂遺跡、光明寺遺跡(茶臼・瀬戸系施釉陶器・墨書黒色土器など)、西河原森之内遺跡(瀬戸灰釉陶器など)
(守山市)
欲賀城・欲賀遺跡(天目茶碗・青磁椀など)、横江遺跡

  
↑木製包丁・漆器椀(下鈎遺跡)

↑中世後期の出土土器類(綣遺跡)





【関連行事】歴史講座 中世の集落と景観
日時 12月4日(日)13時30分〜16時
講演 「近江の村落と地域社会」 水野 章二 氏(滋賀県立大学人間文化学部 助教授)
報告 「環濠屋敷群の展開-栗東市を中心に」 藤岡英礼((財)栗東市文化体育振興事業団 主査)
    「綣村の集村化と大宝神社文書」 山本順也(栗東歴史民俗博物館 資料調査員)
会場 栗東歴史民俗博物館 研修室
定員 100名 先着順(参加費無料。ただし入館料が必要です)


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