特集展示
山水画の世界

会期:2007年5月12日(土)〜6月10日(日)

 栗東の東海道沿い梅ノ木立場で腹薬「和中散」を売る店として有名だった旧和中散本舗大角家住宅には、江戸時代中期を代表する画家のひとり曽我蕭白(1730〜1781)による「楼閣山水図」が残されています。奇矯な画風で知られる蕭白ですが、本作品は落ち着きのある骨太な作品に仕上がっています。
 また梅ノ木立場からひとつ草津宿寄りにある目川立場(現 栗東市岡)には、名物目川田楽を売る「元伊勢屋」があり、その主人であった岡笠山は、地元栗東の文人画家として多くの作品を残しました。中には軽妙な筆致で描かれた山水図もみられます。
 栗太郡下笠(現 草津市下笠町)に生まれた横井金谷(1761〜1832)は、栗太郡ゆかりの文人画家としてよく知られていますが、文化元年(1804)から三宝院門跡高演法親王の大峰入りに付き従って吉野から金峰山、大峰山、熊野をまわったことにより、雄大な山水図を描き残すようになりました。
 本展では、こういった人々の作品を中心に、山水をテーマにした絵画を紹介します。山水とは単なる風景画ではなく、大きな自然のめぐりの中に調和しつつ遊ぶ、人間世界を超越した理想郷としての心象風景でもありました。山水というテーマに込められた、画家たちのさまざまなイメージを感じ取っていただければ幸いです。

【出品資料】  →展示解説資料(PDFファイル)はこちら

▼曽我蕭白(そが しょうはく 1730年〜1781年)
 京の商家に生まれた蕭白は、蒲生郡日野の高田敬輔(1674〜1755)に師事しています。蕭白の画業は、近年とみに高まってきていますが、江戸時代には「画体いやし」との非難と、その奇怪さを胆力ありとして評価する見方が相半ばしていました。伊藤若冲ともども、「異端の画家」「奇想の画家」との位置付けから、円山応挙と対比される画家へと再評価されるようになってきました。
 東海道六地蔵にある旧和中散本舗大角家書院の襖絵楼閣山水図は、謹厳、緻密に描かれていて、蕭白の強烈な個性はおさえられています。大角家には書院や小座敷の小襖にも蕭白の作品が伝わり、柔らかな筆法によって描かれています。


曽我蕭白筆「楼閣山水図」
紙本墨画楼閣山水図    曽我蕭白筆  4面    各 縦168.5p 横92.5p 旧和中散本舗大角家

▼横井金谷(よこい きんこく 1761年〜1832年)
 栗太郡下笠(現 草津市下笠町)に生まれた金谷は、浄土宗の僧となり、天明元年(1781)、京都北野の金谷山極楽寺の住職となったことから、生涯「金谷」の雅号を用いました。与謝蕪村(1716〜1783)に私淑し、画業を学んでいったのです。
 金谷は、生涯を通じて多くの旅に出ています。そうした中で、金谷の絵に大きな転機が訪れたのは、文化元年(1804)、三宝院門跡高演法親王の大峰入りに従ってからのことでした。吉野から金峰山、大峰山、熊野をめぐった金谷は、一段とスケールの大きな山水画を描くようになり、独自の境地を開いていきました。大峰から帰った後は、比叡山麓に草庵を営み、天保三年(1832)に72歳の生涯を閉じました。


紙本著色山水図屏風    横井金谷筆  1双  文政7年(1824)
紙本墨画淡彩山水図屏風 横井金谷筆  1隻  文政2年(1819)

▼岡笠山(おか りつざん)
 栗太郡岡村(現、栗東市岡)の人。生没年は明らかでないが享和三年(1803)の『東海道人物志』に画家として紹介されている。岡野五左衛門といい、名は惟精、笠山は号である。与謝蕪村に私淑して画業を磨いていった。笠山の作品のなかに、江戸時代後期を代表する歌人、香川景樹(1768〜1843)が和歌を賛した図のあること、また壬午の年記をもつ作品は、文政五年(1822)に描かれたものであり、活躍したころが分かる。
 笠山は、家号を元伊勢屋という目川田楽茶屋の主人でもあった。元伊勢屋・小島屋・京伊勢屋の三軒が知られる目川田楽茶屋は、豆腐の味噌田楽や菜飯を名物として、多くの名所記や地誌に紹介されている。

絹本著色夏景山水図    岡笠山筆   1幅 館蔵
絹本著色渓荘訪友図    岡笠山筆   1幅 館蔵
紙本墨画渓亭帰山図    岡笠山筆   1幅 館蔵
紙本墨画深山行楽図    岡笠山筆   1幅
紙本著色渓声談話図    岡笠山筆   1幅 館蔵
紙本著色秋景山水図    岡笠山筆   1幅 館蔵

▼特別出品

紙本墨画前赤壁後赤壁図 岸駒粉本   1鋪 岸大路家伝来資料
紙本淡彩近江八景図    岸岱下絵   1鋪 岸大路家伝来資料
紙本淡彩蘭亭曲水図    岸岱下絵   1鋪 岸大路家伝来資料

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