テーマ展
辻村鋳物師の世界

会期:平成20年(2008)5月31日(土)〜7月13日(日)

 
↑鉄湯釜 太田六右衛門寄進 享保16年 井口天神社蔵


 江戸時代、辻村を本拠とした辻村鋳物師は全国各地に出職、出店し、活躍していました。鍋釜を諸国に運ぶ運送費がかさむことから各地に出職、出店するようになったのですが、鍋釜の製造、販売以外に醸造業や伊吹艾をはじめ、さまざまな製品を取り扱うものも現われています。

 出職、出店した鋳物師の代表が釜七と呼ばれた田中七右衛門、釜六と呼ばれた太田六右衛門です。二人の代表作は辻村鋳物師の記念碑である井口天神社の銅製鳥居ですが、井口天神社に奉納した湯釜を初公開しています。

 一方、辻村で鋳物業を営んでいた代表格が太田西兵衛家でした。西兵衛家から出た太田庄兵衛は三河国平坂に出店を構えていましたが、幕末期には辻村にも工場を設け、太田猪三郎に任せました。この猪三郎の工場を継いだのが太田弁蔵です。弁蔵の太田鋳造所は昭和36年に幕を閉じ、400年にわたって続いてきた辻での鋳物業は、ここに終焉を迎えました。

 本展は、栗東市辻の井口天神社に奉納された辻村鋳物師の湯釜をはじめ、辻村や各地に出職、出店した辻村鋳物師のなかから、常陸国江戸崎に出店した田中忠兵衛のほか、江戸深川に出店した田中七右衛門、幕末から明治初年にかけて辻で活躍した太田猪三郎に関する新出資料を中心として辻村鋳物師の世界を紹介しています。この展覧会をとおして、江戸時代に活躍した辻村鋳物師についての認識を深めていただくことができれば幸いです。

 辻村鋳物師は、かつて全国にその活躍の場をひろげた近世最大規模の鋳物師集団のひとつであり、栗東の歴史の重要な一側面を形成しています。当館では開館以来、辻村鋳物師については重点的に資料調査収集をおこなってきました。またそれらの成果は平成3年の企画展「鋳金の美‐辻の鋳物師たち」、平成14年の企画展「近江の鋳物師‐辻村鋳物師の活躍」などでも公開してきたところです。今回の展示では、平成14年の企画展以降、あらたに見つかった資料や明らかにされた事項などに焦点をあてて開催いたします。
 また辻村鋳物師の調査は、 かねてより地元の多大なる協力のもと調査をすすめてきましたが、今回の展覧会にいたるまでの準備調査の過程においても、当館市民学芸員および古文書研究会の皆様の協力を得ています。最後になりましたが、出品いただきました井口天神社、辻村鋳物師作品の調査や古文書の解読に協力していただきました市民学芸員および古文書研究会の皆様に、心より御礼申上げます。

▼展示解説集

「辻村鋳物師の世界」展示解説集(PDFファイル)



                         
【展示構成】  出品目録はこちら
1.井口天神社に奉納された湯釜
2.辻村鋳物師の出店
   ・江戸崎の出店忠兵衛
   ・本店七右衛門
3.辻村で活躍した鋳物師
   ・太田猪三郎から弁蔵へ

【主な出品資料】
鉄湯釜 太田六右衛門寄進 享保16年(1731) 1口 井口天神社
鉄湯釜 願主田中七右衛門 宝暦13年(1763) 1口 井口天神社
鋳物職器械式並執業一切ノ図「滋賀県管下近江国六郡物産図説−滋賀郡、栗太郡」 1冊 滋賀県立琵琶湖博物館蔵
忠兵衛死去ニ付口上書 文政6年(1823) 1通 館蔵 里内文庫
店卸之儀ニ付一札 文化4年(1807) 1通 館蔵 里内文庫

催し物案内に戻る

表紙に戻る


直線上に配置
栗 東 歴 史 民 俗 博 物 館
〒520-3016 滋賀県栗東市小野223-8
電話 077-554-2733 fax 077-554-2755
http://www.city.ritto.lg.jp/hakubutsukan/