「国際博物館の日」記念事業

テーマ展 近江の彫刻
−参詣道と金勝寺文化圏の諸像−

平成15年(2003)5月17日(土)〜6月29日(日)


 栗東市(りっとうし)南部の山中に位置する金勝寺(こんしょうじ)は、奈良時代に金肅菩薩によって開かれ、平安時代の初め、弘仁(こうにん)年間(810−824)に願安(がんあん)によって伽藍(がらん)が整備されたと伝える古刹です。現在は天台宗に属しますが、金肅菩薩とは、奈良東大寺の初代別当(べっとう)に名を連ねる良弁(ろうべん)のこととされ、願安も奈良の興福寺の僧と知られます。
 琵琶湖にむけて開けた平野部から金勝寺のある金勝山(こんぜやま)を越え、大戸川を少しさかのぼると、そこは聖武天皇の離宮として営まれた紫香楽宮(しがらきのみや)の故地です。奈良東大寺の大仏が、当初は紫香楽宮に企画されていたことも示すように、かつてこのあたりの土地は奈良の仏教界と密接なかかわりを持っていました。金勝寺の当初の参道が、山を南に下って大鳥居(おおどりい:現大津市上田上大鳥居町)の側につづいていたことは、このような背景を反映しています。
 一方、後世金勝山北麓が開発されるにつれ、多くの塔頭や住房的な性格を持った寺院が北麓の尾根筋に営まれました。こうした中で金勝寺は、次第に北麓の村々との関わりを強めていきました。室町時代には金勝庄の総社であった於野宮(現在の大野神社)から金勝寺までを結んで丁石の立ち並んだ参道が成立し、近世の絵図には、金勝寺から北麓に続く「西並木金勝寺道」「東並木金勝寺道」の二筋の参道がみえます。
 金勝寺をとりまく地域は、とりわけ金勝山北麓を中心に古像を多く伝え、金勝寺を中心に仏教文化が栄えたと考えられることから「金勝寺文化圏」とも称されてきました。本展は、この金勝寺文化圏とそこに残された古像について、参道に代表されるような地域のつながりを手がかりに、残された「点」としての古像を、地理的な「面」の中に位置づけてゆこうとするものです。このような作業の中から、古像のはぐくまれてきた背景を考え、金勝寺文化圏の性格やその広がりについても検証したいと思います。


【関連行事】
展示解説会 6月14日(土)13:30〜


【展示資料】

第1部 描かれた金勝寺とその周辺−史実と想像力のはざまで−
(指定区分) (資料名) (員数) (所蔵)
金勝寺四至絵図(複製) 1鋪 現品:金勝寺 栗東市
金勝寺山開発水帳写 附見取図 1鋪 個人 栗東市
金勝寺山開発水帳写 附見取図 1鋪 個人 栗東市
十五丁石 1本 個人 栗東市
興福寺別院金勝寺図略 1鋪 金勝寺 栗東市
興福寺官務牒疏写 9紙 館蔵里内文庫 栗東市
西照教王寺伽藍之絵図 1本 個人 栗東市
興福寺派下金勝寺別院鈎安養寺之絵図 1鋪 個人 栗東市
川辺寺図 1鋪 個人 栗東市
興福寺派下金勝寺別院高野四箇寺四至之図 1鋪 館蔵里内文庫 栗東市
第2部 金勝山北麓の道と古像
木造天部形(伝聖観音)立像 1躯 浄土寺 大津市
木造菩薩形坐像 1躯 宝壽寺 宇治市
木造十一面観音立像 1躯 大野神社 栗東市
木造地蔵菩薩立像 1躯 善勝寺 栗東市
木造毘沙門天立像 1躯 善勝寺 栗東市
木造大日如来坐像 1躯 常福寺 栗東市
木造十一面観音立像 1躯 敬恩寺 栗東市
木造広目天立像 1躯 大通寺保存会 栗東市
木造地蔵菩薩半跏像 1躯 善勝寺 栗東市
木造薬師如来坐像 1躯 薬師寺 栗東市
木造二天立像 2躯 薬師寺 栗東市
木造四天王立像 2躯 金勝寺 栗東市
木造天部立像 1躯 金勝寺 栗東市
木造不動明王立像 1躯 金勝寺 栗東市
木造阿弥陀如来立像 1躯 東方山安養寺 栗東市
木造聖観音立像 1躯 萬年寺 栗東市
木造毘沙門天立像 1躯 西遊寺 草津市
木造毘沙門天立像 1躯 西遊寺 草津市
【スポット展示】
木造阿弥陀如来坐像 1躯 正法寺 甲西町
木造追難面 2面 正法寺 甲西町
【ロビー展示】
石造不動明王廿九丁石(複製) 1基 現品:広徳寺 栗東市
小屋谷観音磨崖仏(複製) 1躯 現品:栗東市 栗東市

※指定区分については、◎は重要文化財、△は県指定文化財、□は市町村指定文化財をあらわす。
※会期中の展示替はありません。

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