近江地方史研究の魁(18)
精力的に栗太郡内調査
『近江坂田郡志』『近江蒲生郡志』についで、中川泉三が編纂した郡志が『近江栗太郡志』である。
栗太郡において郡志編纂が決定したのは一九二一(大正十)年のこと。当時、『近江蒲生郡志』編纂中であった泉三に栗太郡志編纂が託された。
泉三が最初に行なったのは資料展覧会の開催である。二二(大正十一)年三月四、五日の二日間、郡内各地から一六百件余に上る資料が郡役所に集められ展示された。
栗太郡を代表する歴史資料、長享元年銘の金勝寺制札や、名薬和中散の看板などから個人宅に伝わる近世・近代の古文書まで、さまざまな資料が出品された。資料展覧会は郡内に郡誌編纂事業の開始と、それに伴う資料提供をよびかけるのにはうってつけのイベントであった。
その後、泉三はたびたび栗太郡に足を運んで資料調査を精力的に行う。葉山村の資料収集を担当し、泉三の調査に同行した里内勝治郎が残した調査日誌には、その様子が克明に記録されている。
例えば、ある日は午前八時半に勝治郎宅に到着し、系図や絵図などを模写、正午に勝治郎宅を出て和中散宅の調査、その後近くの銅鏡出土地に向う。個人宅で昼食をとり、続いて高野神社と隣接する松源院を訪問、大般若経や神像、石灯籠を調査し、午後五時から出庭神社の石造物を調査、六時に調査終了、とかなりの強行軍であった。
こうして収集した資料は大字ごとに綴られ、これをもとに泉三は『近江栗太郡志』を書き上げたのであった。
『近江栗太郡志』編さんで泉三が収集した資料の一部
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