近江地方史研究の魁(19)
勝治郎の奔走ぶり紹介
『近江栗太郡志』編さんでは、郡内各大字から数人ずつ資料収集委員が任命されている。委員は小学校長や地元の有識者からなり、彼らを巻き込みながら編さん事業は進められた。前々回紹介した里内文庫主であった里内勝治郎も委員の一人であり、彼によって旧葉山村の資料の多くは調査され、中川泉三による史料調査の準備も整えられた。
『近江栗太郡志』編さん中に行なわれた資料展覧会には、里内文庫の収蔵品が出品された。特に話題をよんだのは「琵琶湖近傍大絵図」である。江戸時代、伊能忠敬が全国を測量して歩いて作製した測量図の一つで、琵琶湖を中心とした近江国図の複製であった。
実は勝治郎にこうした資料の収集を勧めたのは、中川泉三その人であり、泉三の助言をうけて勝治郎が作製したものだった。ともあれ、展覧会を報じた新聞ではこの絵図が“栗太郡志編纂上逸す可らさる史料”と大きな見出しをつけて紹介され、郡誌編纂事業の啓発に一役かったのであった。
一九二六(大正十五)年、『近江栗太郡志』を上梓した泉三はその冒頭に郡誌編さんで協力を得た人物として、久米邦武、三上参次ら中央の研究者を載せるほか、「特に各種資料を調査し提供されし里内勝次郎君」と紹介している。これは百六十人以上が任命された資料収集委員の中では別格の扱いであり、勝治郎の奔走ぶりをよく示している。
里内勝治郎が提供した『近江栗太郡志』
編さん広告塔「琵琶湖近傍大絵図」
特集展示「中川泉三と里内文庫」の紹介に戻る
催し物案内に戻る
表紙に戻る
栗 東 歴 史 民 俗 博 物 館
〒520-3016 滋賀県栗東市小野223-8
電話 077-554-2733 fax 077-554-2755
http://www.city.ritto.lg.jp/hakubutsukan/