栗東よもやま話(3)
阿弥陀寺の二十五菩薩面   栗東市東坂

 阿弥陀寺は、室町時代の応永20年(1413)に隆堯(1369〜1449)によって開かれた浄土宗寺院で、近江の浄土教団の中心的な役割を担ってきた歴史を誇ります。

 阿弥陀寺には二十五菩薩面と、それに付属する装束、各菩薩の持物などが一つ一つ木箱に入れて大切に保管されてきました。

 二十五菩薩とは、亡くなる人を西方極楽浄土に迎えるため、阿弥陀如来に付き従ってやってくる菩薩たちのことです。その来迎の様子を演出してみせる宗教行事に「迎講(練供養、迎接会)」と呼ばれるものがあります。これらの面や装束は、迎講に使われるものです。しかし、なにしろ25人分もの本格的な木造の面や装束、さらに楽器などをかたどった各種の持物一式ですから、相当な量にのぼります。

 これらが誂えられたのは、江戸時代末の嘉永元年(1848)のことです。協力を募る勧化帳には、昔から迎接会を営みたいと思ってきたけれども果たせずにきたこと、今年は阿弥陀寺の開祖隆堯の4百回御遠忌にあたることから新調を企画しているが、独力では難しいので皆の協力を依頼したいことなどが書かれています。

 これに応じた人々は地元東坂をはじめとする金勝地区内にとどまらず、小柿、坊袋、下鈎、安養寺、小野をはじめ現栗東市域の各村々、桐生、大鳥居、(大津市)、矢橋、追分、矢倉、南笠、志那、集、草津(草津市)、信楽、牧、水口(甲賀市)、東寺、西寺、石部、柑子袋(湖南市)など湖南から甲賀を中心とした広範囲に及びました。

 今では阿弥陀寺の迎講は行われていませんが、昭和まで行なわれた様子を多くの人が覚えておられます。迎講は現在も京都の即成院や奈良の当麻寺などで行なわれていますが、滋賀県内ではほとんど知られていません。阿弥陀寺で行われていた迎講は貴重な一例といえるでしょう。


(「りっとう再発見」31 『広報りっとう』825号(2007年10月号)掲載)



  

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