栗東よもやま話(9)
なつかしの古民家−旧中島家住宅−   栗東市小野・霊仙寺


 旧中島家住宅は、栗東歴史民俗博物館の敷地内に建てられている古民家です。
 この民家はもとJR栗東駅の北東に位置する霊仙寺にありましたが、所有者の中島常三郎さん(故人)により栗東町に寄贈され、平成5年度に移築、平成6年5月より公開されました。

 同家は、同じ霊仙寺村から分家した隠居屋であり、嘉永3(1850)年生まれの初代文次郎は米屋を営んでいました。主屋の構造や建築手法からみて創建は明治初年ごろと推測され、創建当初の姿に復元して再建されています。

 中島家の入母屋の屋根は地元の人からは「くずや」と呼ばれる草ぶきで、もとは小麦わらでふかれていましたが、現在は耐久性の高いかやぶきの屋根となっています。屋内は土間と居室に等分されており、居室部分は柱を中心に四つの部屋が漢字の「田」の字の形に配される、いわゆる整形四つ間取りの構成をしています。部屋は仏壇のあるオクノマ、簡易の客間として利用されるディ、寝室のナンド、食堂とダイドコとそれぞれ名称と用途が決まっていました。

 また、家屋の平側に戸口が設けられる平入りの民家で、表口と裏口が土間を挟んで対面しています。

 これらは、近畿地方にある農家の標準的な造りですが、牛小屋だけが通常と異なる位置にあります。この地方の牛小屋は一般に表口の妻側にありますが、米屋を営んでいた中島家では、店舗・作業場確保の関係からか、裏口の妻側にカマドと並んで牛小屋が配されていました。

 旧所有者の常三郎さんは明治32年生まれの古老で、昔ながらの生活様式を愛する人だったといいます。創建から常三郎さんの時代に至るまでのおおよそ130年間、中島家住宅は中島さん家族の歴史を見守ってきました。土間および4・5畳2室、6畳2室で構成される旧中島家住宅は、現代人の目からみると決して立派な建物とはいえないかもしれませんが、庶民のくらしの足跡に思いをはせることのできる貴重な建物といえるでしょう。


(「りっとう再発見」21 『広報りっとう』813号(2006年12月号)掲載)

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